Session.1 ステアリング操作

 ステアリング操作の基本は上から下にハンドルを切ることである。サーキットやラリーでは瞬間的なハンドル操作を要求される。そのときにハンドルを回すという感覚ではとても対応できない。そのため切るという感覚が重要なのである。下から上にハンドルを回す場合は、なかなか力が入らずすばやい操作もしにくい。そのため、コーナーでは常に上から下にハンドルを切るという感覚でいたほうがより操作がしやすい。

 握る手もなるべく力は入れず、指を添えるような感覚でいるほうがよい。ステアリングのスポークを利用してうまく指をひっかけるのがおすすめだ。

 より具体的にみていこう。基本とする両手の位置は9時15分から10時10分付近とする。
 小さなコーナーの場合は特に問題はなく,普通にハンドルを切ればよい。大きな右コーナーの場合は、右手を10分の位置から、コーナーの大きさに応じてステアリングの上部に持ちかえる(図1)。次に右手を上から下へ引きおろしていく(図2)。このときの左手はハンドルの上を滑らせる感じで、決して力を入れて押し上げようとはしてはいけない。引き手主導にすることが、リズミカルなステアリング操作をするポイントだ。

 ヘアピンなどでさらにハンドルを切る必要がある場合は、左手を上に持ち変え、引きおろしながらハンドルを切っていく(図3)。そのときに右手はクロスしないように注意する。

図1              図2             図3


Session.2 アンダーステアはこう克服せよ

 ポルシェ・カレラ4などを除いて、現在の4WD車はほとんどがフロントエンジンを採用している。しかも4WD車ではエンジンとミッション、トランスファーが一体のものが主流で、重量配分はかなりフロントヘビーになる傾向がある。フロントタイヤにはいつも、より重い重量がかかっている訳で、コーナリングでも外側へふくらもうとする力が強く、グリップの限界点をこえればまっさきにフロントタイヤがすべり出すことになる。このため4WD車はアンダーステアが出やすい。

 しかし、4つのタイヤを駆動させることにより安定性が生まれ、FF車に比べるとアンダー傾向は弱い。FF車はパワーアンダー(駆動力が上がってくると前輪の横滑りが大きくなる)の傾向が強いことも、強いアンダーステアになりやすい原因の一つである(タイヤの総グリップ力はタイヤの回転方向のグリップ力と横方向のグリップ力の総和によって決まり、これらの和はいつもほぼ等しいという関係がある)。FF車では全てのトラクションが前輪にかかるため、タイヤの回転方向に前タイヤのグリップ力の多くを使ってしまい、横方向のグリップ力は落ちてしまう。これを逆にうまく利用したのが、「タックイン」というテクニックで、パワーアンダーの状態になったときアクセルを抜くと、フロントタイヤのグリップ力が回復し、瞬間的にノーズがクィッと内側を向くもので、ハイレベルなFFスポーツドライビングには欠かせないテクニックとなる。4WD車はFF車に比べそれほどタックインは強くないが、アンダーステアの克服法の一つとして「アクセルオフ」のテクニックも覚えていて損はない。つまりタックインとは、ブレーキを使わずにアクセルオフだけでフロントのグリップ力を向上させるテクニックと言える。実戦的なタックインのテクニックは、例えば右コーナーなら3速以下の低めのギアで(そのほうがエンジンブレーキが強くかかるため)コーナーへアプローチし、アクセルを抜き(アクセルを抜く瞬間までアクセルは踏んでおき、リアへ荷重を掛けておく。その状態で一気にアクセルを抜くのがポイント)、フロントタイヤに最大荷重がかかった時点でステアリングを素早く短く右へ「スパッ」と切ってやる。すると今までリアに掛かっていた荷重が一気に抜けリアタイヤがグリップ力を失い、ステアリング操作とあいまって外側へ曲がろう(スピンしよう)とするヨーモーメントが発生する。逆にフロントタイヤはグリップ力を増しステアリングの応答性が向上し、車はコーナー内側にクィッと向きを変えてくれる。もしここでリアがスライドすれば、慣性ドリフトに移行することもできる。慣れてくれば、軽めのブレーキで済むコーナーであれば、ブレーキを踏まずにアクセルオフだけで車の向きを変えられるようになる。しかし、タックインが使える場面は限られ、強いブレーキングが必要な多くのコーナーの場合は、次に述べるブレーキングによる荷重移動のテクニックが有効だ。


(C)Subaru World Rally Team

(C)Mitsubishi Motors Co. Ltd

 コーナリング中になぜアンダーステアが起こるかというと、それはフロントタイヤのグリップ力がリアタイヤに比べて落ちているためである。そこでアンダーステアを克服するには、フロントタイヤのグリップ力を上げてやる方法が一番効果的だ。それにはどうするかというと、コーナリング中に素早くフットブレーキを踏み、荷重移動をさせてやる。そうすると前輪が強く地面に押し付けられ(特にコーナーと逆のフロントタイヤ)、グリップ力が回復しハンドル操作にフロントタイヤが反応をしてくれることになる(リヤタイヤのグリップ力は逆に落ちる)。より実戦的なテクニックは、コーナーに入りステアリングを切り込むときに減速を残すことで(減速の最後の段階を残しながらコーナーに突入する)、こうするとステアリングの反応性がグッと増しスムーズなターンインが出来るようになる(オーバースピードには注意しよう)。さらに効果的なのは、これにヒール&トゥを使ったエンジンブレーキを併用することで、こうすると前方への荷重移動をより安全に行うことができ、また鋭い立ち上がり加速を得ることもできる。

 しかし、コーナリング中のブレーキは慎重の上にも慎重を期し行って欲しい。素早いフットブレーキといっても強く踏みすぎてタイヤをロックさせてしまっては何にもならない。そうすると確実にコースアウトしてしまう。エスケープゾーンのない公道でそれをやると廃車は免れないだろう。ブレーキングは素早くかつデリケートに行う必要がある。ABS装着車の場合、ロックすることはほとんどないと思うが…。

 プロのラリーストはこれを左足で行うことがある。コーナリング中でもアクセルべた踏みが多いラリーでは(4WDは4つのタイヤを駆動させるため、1つのタイヤにかかるトラクションは2WDに比べ弱く、これを滑らすにはアクセルをべた踏みでパワースライドを起こさなければならない)、荷重移動をさせる場合、遊んでいる左足を使ってブレーキングをすることが多い。しかし、左足ブレーキは慣れないうちは強めに踏んでしまいがちになり、よほど練習を積んだドライバーではない限りコーナリング中の左足ブレーキは危険すぎるので絶対にやめてほしい。


Session.3 4WD車のライン取り

 4WDの最大のメリットは、4輪を駆動することで生まれるトラクションの高さと走行安定性にあると言える。つまり、4つのタイヤを駆動することで、1つのタイヤに掛かるパワーは抑えられるためホイールスピンしにくく、限界域近くのコーナリングでアクセルオンしても駆動輪がそう簡単には滑り出さないため、安定感のあるコーナリングをすることができるのである。

 また、2輪駆動車ではパワーを上げすぎるとホイールスピンやパワースライドなどの現象を起こしやすいが、4WDはパワーを無駄なく路面に伝えられるためハイパワーな車が多く、またその構造から車重が重くなりやすいという特徴もある。

 この4WDの特徴を活かし、初期アンダーというデメリットを消すためのライン取りを今回は考えてみよう。それは一言でいうと、「スローイン・ファーストアウト」である。つまり、コーナーに入るまでに充分減速し(多少のブレーキングを残すことを忘れずに)、早めに車の向きを変え、そしてクリッピング・ポイント(以下CP)をコーナー頂点より遠くにとり、なるべく直線的なラインを描き、アクセルを早めに開けられるようにする。これがハイパワー4WDの基本的なライン取りである。

 しかし複合コーナーなどではこの原則通りに行かないこともあり、最短距離のライン取りで行くか、アウトインアウトで行くか、突っ込み重視のライン取りで行くか、前後のコーナーの状況によっても変わりうる。いつもこれで行けばいいという訳ではないところが難しいところで、そこはコースを走りこんでベストなラインをみつけていくしかないだろう。

 ラリーでのコーナリングも原則的には「スローイン・ファーストアウト」である。それはラリーではブラインドコーナーが多いことと、路面の状態が各コーナー毎に異なるためで、ハイスピードでコーナーに突入するのは危険すぎるからである。初めてのサーキットやワインディングでもこの原則は大いに役立つはずである。


(C)Peugeot Sport

(C)Ford Racing


Session.4 フェイントモーション

 フェイントモーションとは一言でいうと、ハーフスピン状態でのドリフトである。これは、低μ路やハイスピードの状態でタイトコーナーへ進入する場合には、欠くことのできないテクニックで、WRCでは2回、3回と繰り返しフェイントモーションをかけ、複合コーナーをクリアしていくシーンによく出くわす(おばちゃんが左折するときにも!?(笑))。そのメリットは、曲がりにくい4WDやFF車のターンインをスムーズにさせることにある。

 ここでは一番典型的と思われる、ストレートの後の左タイトコーナーを例にとってみていこう。まず一番アウトではなく、ややインよりのラインを通ってコーナーへアプローチする。このときに注意することは、充分スピードに乗るということで、かなり重量のある車をハーフスピンさせるほどの慣性力を得るためには、それなりのスピードがなければ難しい。次に、急制動によりフロントへ充分荷重を乗せ、コーナーとは逆方向(右)へステアリングをすばやく切る。これだけでリアが滑り出せばOKだが、そうでない場合はさらにフットブレーキを踏んでリアのスライドを誘発させてやる。ハイグリップタイヤを履いてサーキットでこれをやるのは難しいので、初めはダートを見つけて試してみるのがよいと思う(雪国ならば雪の上でやるのがベスト)。リアが滑り出したら、今度は本来の左へステアリングを切る。そうすると、今まで右回りのモーメントが発生していたのが、ゆり返しにより、より大きな左回りのモーメントへ変化し、ハーフスピン状態でターンインに入る。タイミングよくコーナー入り口でこの状態が得られるかどうかが、とても難しい。後は、必要な角度だけ車が向きを変えたら、アクセルを踏んで、トラクションをかけてやる。そうするとハーフスピン状態が止まり、立ち上がり始める



Training Sessions for  Sports Driving Techniques for 4WD car
この講座で、4WDのスポーツドライビングの基本〜真髄について、僕と一緒に、勉強をしていきましょう。

(※)しかし公道ではあくまで安全運転を心がけましょう。ここで、自戒を一つ…。「公道では負けるが勝ち」