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White Album 2 考察

 
Introduction

 このゲームはPC版では所謂エロゲーというジャンルに入るのでしょうが,その括りだけで切り捨ててられるのはあまりにもったいないほど物語がよく出来ていて,こうして長文の感想を書かせるほどの感動を与えてくれました。三人の深層心理にまで踏み入って,この物語の感想を書いてみたい思います。かなりの長文なので,その点はご容赦下さい。
 PC版はプレーしたことがなく,コンシューマー版は誰でも気軽に楽しめます。このゲームにエロいシーンは必要ないと思うので,PC版をプレーする予定はありません。
 アニメ版もありますが,あれはおまけ映像のようにしか思えず,確かに動いているキャラをみるのは新鮮でよかったですが,表情だけでキャラクターの心情を読み取るのは難しく,この物語のことを深く知るにはゲームをするか小説を読む必要があります。
 このゲームをやったことがある人はもちろん,やってない人も是非プレーした後に,この感想を読んで欲しいと思います。
 ホワイトアルバム2に関するみなさんの感想も募集しています! このページに組み込みますので,shinnosuke#shinnosukes.com (#を@へ変更) まで送って下さい。下のコンタクトフォームからも送れますが,スパムが多いので見逃すかも知れません。長文でも構いません。この記事に関する感想も募集しています。

 (*) 長文なので,とりあえずClosing Chaptorの感想まで載せます。みなさんからの反応があれば,更新も早くなるかも知れません。
 (*) 2016年4月10日 みんなの感想「Yuukaさん編」 追記

トロフィーコンプして

1 ついに,全てのトロフィーを取った。このゲームは,軽い気持ちで初めたのだが,はまった。そして泣いた。涙が止まらないシーンが数々あった。人物像も実に興味深かった。ゲームという枠を超えて,いろいろなことを考えさせてくれる作品だった。この作品は,声があり,素晴らしい音楽があり,挿絵程度ながらも背景もあり,小説では絶対に味わえない体験をさせてくれたと思う。小説では敵うはずのない,ゲームの可能性を示してくれたと思う。

 普通にやれば100時間近くはかかるという膨大なテキストと三角関係から生み出される様々な人間模様,深く掘り下げられた人物像など,何度プレーしても恐らくその度に新しい発見があるのではないかと思わせる作品だ。

 本編は全三部構成(Introductory chapter, Closing chapter, Coda)で,実に6年間におよび,Extra episodeや派生する物語も全て集めると,さらに広がりをみせる。膨大な物語りだが,それらに書かれている三人の物語は,いくつもある可能性の一部に過ぎないとも考えられ,敢えて自分を登場人物に置き換えて,自分だったらどうするだろうと,その後の展開を考えてみるのも面白いのではないかと思う。攻略順については,好きな順番で構わないと思うが,Closing Chapter雪菜ルートに入る前に,「歌を忘れた偶像(アイドル)」を読むことをお薦めする。雪菜と繋がれたときの感動が何倍にもなるはずである。Codaの痛みも何倍にもなるが…。

 まず,本編の感想に入る前に,主人公とダブルヒロインについて書いてみたいと思う。書いていて改めて思うが,この二人のどちらかを選べというのは,本当に難しい選択といえる…。

 (1おわり)

春希

2 本編の主人公。理屈っぽく,お節介。それも超がつくほどの。「歌を忘れた偶像」の中の春希の紹介が端的に表している。「どんな頼まれごとにも労を厭わず,けれど必ず文句をぶつけまくる」と。真面目だけど,融通が利かず,論戦では相手に逃げ場を与えず,自分が信じる誠実さに則って行動する。少々うざい性格だが,噛めば噛むほど味がでるいい奴だと思える。

 また勉強や仕事の能力はとても高く,周囲からの信頼も厚い,それに心の中はとてもやさしい。彼のその優しすぎる性格が,困っている人は放っておけず,ついつい干渉せずにはおれない性格の根源だと思う。そして,理屈にうるさく,責任感が強い分,自分の理不尽な行動に対する罪悪感が強い。この罪悪感こそが春希自身を,そして周りの人間をも苦しめ続ける根本的な要因となっている。

 永遠の委員長キャラだが,ときに壊れる。感情の制御が利かなくなる。その場面は共通していて,自分が心から頼りにしていた,依存していた相手が,自分の前からいなくなるという場面でその症状がみられる。まるで,迷子の子供が母親を探すような退行現象であり,春希の子供の頃のトラウマに原因があると思われる。春希が小学校高学年の頃,冷徹な応酬の末に,両親が離婚した。それから母親と相互不干渉の関係となった。そういう親しいと信じていた人に裏切られるという場面になると,子供の頃の記憶がフラッシュバックしてくるのだと思われる。同時に,その離婚とその後の母親との関係を通して,親や大人に対して不信感を抱き,自分一人で強く生きようと心に誓ったのだろう。春希のしっかりとした性格は,両親の離婚後,「家にいる男は僕一人なので,どうしても去勢を張る癖がついてしまって。…昔から,あまり子供らしくないって言われます」ということに起因するらしい。

 今の春希の委員長キャラは,両親の離婚後,春希の努力によって自ら得た性格のように思う。理不尽な親の理屈に対して何も言えなかった自分への反省から正論で武装することを覚え,理不尽な親の態度と重なるような曲がったものに対しては首をつっこまずにはおれなくなったのか?そのトラウマは春希の最も暗部であり,本人はその部分に触れられることを極端に恐れ,常にそれから逃げようとする。その部分に真正面から向き合ったのは,婚約者特権を持った雪菜だけである。

 (2おわり)

かずさ

3 かずさの性格は,比較的わかりやすい。基本的に感性の人で,見た目以上に純粋で,素直,そして正直。しかし,甘い性格でいわゆる世間知らず,不器用,怠惰,小心者,ネガティブ思考。しかもプライドが高く,孤高,人を寄せ付けない,無愛想。1,2年生のときに自分を色眼鏡でみて,特別扱いする教職員と同級生の双方に,平等に牙を剥くという行動からは,上っ面の付き合いに対する嫌悪感,そういう人間への侮蔑,そして本当の自分をみてもらいたいという欲求があるように思われる。人を寄せ付けない自分の態度を改める気もないため,それは叶わないことだと最初から諦め,孤高の中に逃げこんで益々苦しい状況を自ら作っている。春希との最初の出会いでの,「(私の心に)触るな!」との言葉はそれを端的に物語っている。春希の言葉を借りると,「狼の皮を被った兎…孤高を気取り,けれど寂しければ死んでしまう,そんな,絶滅するしかない歪な種」。

 そういう雰囲気を醸し出しているにも関わらず,愛する人に対しては,乙女丸出しで,ひたすら一途,相手のことを気遣わずにはおれず,信じられない甘えっぷりを発揮する。「待て」という命令を忠実に守る。まさに「忠犬」という言葉がぴったりとくる。いわゆる究極のツンデレキャラ。

 しかし,愛する人に対してそういう行動がとれるというのは,その相手を全面的に信頼して,自らを投げ捨てることが出来ていることに他ならない。小心者だけでは,とてもそんな勇気ある行動はとれない。かずさ自身は自らをheel(悪役)と位置づけているみたいだが,それはその人を寄せ付けない外面だけで,内面はとてもピュアな魂を持っており,一度深い関係を持ってしまうと中毒的に虜にさせられるような,強い魅力を持った女性といえる。家事は一切できないが,もし春希がやって欲しいと頼めば,文句を言いながらもやってくれるだろう。…が,春希がそれを言い出すことはないだろう。。かずさが超甘党なのが面白いが,それは彼女という人物の内面を端的に表している。

 彼女は誤解されやすいが,学園祭前に春希から教室でちょっと待ってて欲しいと言われたから,5時間も待っていたり,かずさTrueエンドで,春希を奪ってしまった代償として,自らのピアノ人生を代わりに差し出そうとしたり,一秒でも早く会いたいだけのために,コンサート前日にも関わらず,極寒の中,玄関前で帰宅を待っていたりと,言葉ではない行動で現されるその思いの強さに,心を動かされる。さすがは,表現者(ピアニスト)というべきか。

 他人との関わりを自ら意図的に絶っているため,彼女の世界はとても狭いものだが,その世界は他の二人よりもはるかに広い世界へとつながっている。

 春希がかずさと結婚すれば,かずさTrueエンドにもあるように,基本的に超ベタベタで,しかし春希の望む女性になるように一生懸命(できる範囲で)努力するだろうし,春希を護るためなら,自分の全てを投げ出してもいいと思うような女性になるのだろう。春希も言っていたように,こんなにもストレートに好きだという気持ちを伝えられたら,他のことは何もいらないと思えるかも知れない。隣で気ままにピアノを弾いてくれるだけでも。

 (3おわり)

雪菜(せつな)

4 雪菜の性格は掴み難い。恐らく,作者でさえも掴みきれていない(決めきれていない)のではないかとすら思う(千晶Trueエンドの千晶の言葉にあるように)。ただ,一言で言うなら理性的と言える。常識を踏み外さない力を持っている。基本的に自分を押し殺して,他人を利する行動を取ることができる。そういう性格なのだろう。雪菜という人物を考えるとき,視点を変えて見る人物把握法が有効だと思われる。

 まず第三者からみた視点。他人からみた場合,雪菜はまずアイドル並に綺麗で,そして意外にきさくで,やさしく,家庭的,聡明でよく気がつく,けどちょっと付き合いが悪い,身持ちが固いとみえていると思われる。“愛嬌のある高嶺の花”。それが雪菜の表向きの顔だ。

 次に家族からみた視点。家族からみた雪菜は,結構我儘で,頑固で,怠惰で出不精。それに家族思いで,庶民派。多分,そんな風にみえているだろう。

 親しい友人からみた視点では,どうしようもなく一途で,過去に囚われ過ぎ,一人心を悩ます日も多く,けど決して弱音を吐かず,じっと耐える強い女性。そういう見方が加わるだろうと思う。

 次に春希からみた視点。春希にはそれらの視点に加えて,決して人を責めない,聖母のような,太陽のようにいつも暖かく照らす存在のような懐の広い女性にみえているようだ。雪菜といる春希が壊れないのは,雪菜のことをそういう存在だと思っていることもあるが,最も大きな要因はかずさに対してのように熱情に流されるほど愛している,という感情がないのが大きいと思われる。さらに,家族関係にトラウマを抱える春希は,雪菜の背後にいつもあの温かい家族を感じている。それに,少々意地悪で,悪戯っぽく,高嶺の花なのに安っぽく,庶民的とも思っており,飾らない素の彼女に魅力を感じているようだ。

 次に本人からみた視点。これは雪菜の心理描写がほとんどないので難しいが,自分の性格はあまりよくは思っていないのかも知れない。ここでは敢えて,ときどき垣間見える,結構人間臭い負の感情を挙げてみることにする。例えば,「祭りのあと~雪菜の三十分~」で,三人のバランスを取るという理由で,自己中心的とも取られかねない行動をする彼女。Closing Chaptor雪菜ルートで,ぺこぺこ謝ったり,諦めの悪いことをいう春希に対して,「ほんと,今の春希くんってイライラするよ!」という彼女。かずさTrueエンドで,自分が壊れることで春希を振り向かせようと考えた「卑怯者」の彼女や,自分がいなくなることで春希が心配して,コンサートを台無しにしてまで探してくれるかも知れないことを,わざと考えなかった「キタナイ」彼女。自分の我儘や自己満足のために春希に寄り添い続けることを選んだExtra Episodeでの彼女。かずさと春希の関係を嫉妬する彼女。ミス峰城大付という表の顔を守るために影でアルバイトを続けていたり,「歌を忘れた偶像」で春希とは付き合ってもいないのに,付き合っているように家族に見せかけたりという虚栄心(見栄っ張り)を持つ彼女。「歌を忘れた偶像」で,春希と何の進展もなく,新たな彼女かも知れない人を見かけて嫉妬し「あ~,もうっ,イライラするなぁっ!」と地面を蹴った彼女。春希の親友である友近と,二人が一生懸命バイドしてやっと入院することの出来た彼の母に対して嫉妬する彼女。友近を傷付けても,自分を守る自分に対して「ほんと,なんて自己中なんだろう,わたし」という彼女。かずさTrueエンドで,「…かずさのコンサートの日だってわかってたから,あなたを,絶対に東京へ帰したくなかったの」という彼女。それらも無理に重箱の隅をつついて探したという感じのもので,普通の人ならマイナス評価にはならない程度のものだと思われる。春希のせいで自分の性格がどんどん悪くなっていき,誰にでもいい顔をすることはせずに,心に棘を持った時期もあったけど,表向きの顔はほぼ完璧といえる。そのため,ある意味では嘘臭いとも感じられるが,前述のように人間だれでもネガティブな感情は持っているものであり,むしろそういう感情を抱えているにも関わらず,出てくる行動はほぼ常に理性的で,結果的に相手を救う行動になっていることが多いのは,凄い人物だからであるのは間違いない。たまに感情に任せて春希を振り回すこともあるけど,それはそれでかわいいと感じられるからいいではないか。少しのありふれた我儘以外に,自分の周りの人間を全て幸せにしたいという大乗的な我儘を持ち合わせているのは,この若さにしては凄いと感じる。

 よく雪菜は太陽のようだという感想をみるが,実際そうとも思うが,彼女にとっては多分に予想範囲内のことだから,感情的になることはなく,そういう反応になるのだと思う。春希が自分を裏切っているのに,責めたりしないのは,元々のきっかけは自分が作ったものだと思っているし,二人の思いもよく分かり過ぎるからなのだろう。

 もし春希が雪菜と結婚するなら,美人でかわいく,良妻賢母,しかも強くて,いざというときは全力で春希や家族を支えてくれるであろう超人的な妻になるであろうイメージしか湧いてこない。もし春希がかずさと知り合わず,三角関係のトラウマがなければ,雪菜との結婚は幸運街道をまっしぐらに歩むものになったのだろう。尤も,千晶との会話で「わたしはね,彼女(かずさ)を優しく見つめてる彼が好きだった」「わたしはね…,彼がわたし以外の人を好きでも構わなかった」「それでも,わたしのことも好きでいてくれるなら。彼と彼女の世界に,わたしもずっといさせてくれるなら」と雪菜も言っているように,かずさがいなければ,そもそも春希に興味が湧くこともなく,それほど好きにはならなかったかも知れないというのが,物語を複雑なものとしている。

 (4おわり)

Warning!

5 以下,本編の感想を述べる。「ネタバレ内容のみ」しか,含まないので,未プレーシナリオの感想は決して読まないことをおすすめする。できればコンプリートしてから読んで欲しい。各ストーリー毎に分けているにも関わらず,いろいろと脱線や重複があるが,それはご容赦願いたい。

Introductory

6 最初はPS3の体験版をやったが,前半はダラダラの会話で過ぎていき,こんなものかと途中でやめていた。しかし,何ヶ月かして,ネットの感想などもみて,もう少しやってみるかと読み進めてみると,見事にはまった…。気がついたら,(体験版の)エンディングまでぶっ続けで(7時間ぐらい?)プレーしていて,既に夜が明け始めていた頃。仕事が休みでよかったと心底思った…。ストーリー序盤では,話の背景が分からなくて無意味な会話が多いと思えるかも知れないが,初めてプレーする人はその壁を乗り越えてほしい。実はこのIntroductory Chaptor(以下 IC)はよく練られている。最初からしっかり人物像とそれらの関係がカチッと決まっていて,それが最後の最後までブレがない。なので,エンディングをみてから読み返すと違った感想となるだろうと思う。というか,このICの核心的な部分は,1回目のときは意図的に削られている。この核心的な部分を知ってしまった2回目以降は見方がまるで違ったものとなるだろう。学園祭後の二人のキスシーンで,雪菜が「ごめんね」と言った真意が分かる。

 このICは三人の関係がある意味一番よいときなので,終盤以外,比較的楽な気持ちで読んでいける。そして,終盤の盛り上がりはやはり凄い。このICの出来事が,後々全ての物語の元となり,後で繰り返し繰り返し提示されるThese(テーゼ)となる。膨大な物語の中の,何重にもなった伏線となっており面白い。

 まず冒頭の「どうしてこうなるんだろう。。」は,全てのストーリーを知ってしまってから振り返ると,ある意味自業自得とも思える…。その直後,雪が降ってきたときのセリフは最初は意味が分からなかったので,念のために,個人的な解釈をここで述べてみる。「とうとう,降ってきた。ずっと三人でいることを誓い合った日にも。三人から二人(春希と雪菜)が抜けだしてしまった日にも。そして今日…。二人(春希とかずさ)から一人(かずさ)が去り,一人(春希)と一人(雪菜)が残されてしまった日にも」。1回目の「二人」に関しては自信がないが,2回目の「二人」は春希とかずさと読み解くのが正しいと思われる。最初は「二人(春希とかずさ)」だけで,そのままであればよかったのだが,それではそもそも何も始まっていないかも知れない。それはこのIC感想の後半で詳しく述べてみる。

 (6おわり)
7 さて,ここから具体的にストーリーの主な展開を追って振り返ってみることにする。まず,春希がかずさを誘うために,雪菜の協力を頼んだときに,雪菜は最初彼女の秘密である2年間のスーパーでのバイトの話をかずさにすることを嫌がっていた。しかし,春希がかずさのことを語るときに,春希すら気づいていない彼の真意に気づき,春希のために協力することを決心する。自分では多少後悔しながらも。この時点では,雪菜は春希に興味はあったけれど,恋人同士になりたいとか,そこまでのものではない。

 ICでの三人の関係は、三人の出会いに象徴される。春希とかずさがセッションを楽しんでいるとき(春希はこのとき、ピアノを弾いているのがかずさとは知らない)、その楽しげな音色に誘われて間に割り込んできたのが雪菜である。

 学園祭1週間前に同好会メンバー全員で冬馬の家に集まるが,そこで雪菜は,二人は以前からここで合宿をしていたことに気付く。そのことによって「地味に」ショックを受けるのだが,そのときの彼女の行動により春希への思いの強さが浮かび上がってくる。そこで春希は雪菜をフォローするために電話を掛け,正直に冬馬の家に合宿したことを話すが,このときの春希の気持ちは三人の関係を崩さないためなのか,学園祭に向けてわだかまりを取り除いて置きたいからなのか分からないが,そのときにみせた“隙”により,この後続く三角関係の基板が出来上がってしまう。個人的には雪菜に電話を掛けるべきではなかったと思う。春希の中にはかずさに対する強い思いは確かにあるのに,雪菜に春希のことを思うのを許すような形になってしまった。でもそれは,何にでも干渉せずにはおられない春希の性格から来るもので,本人は全く悪いことをしてるという意識のないところが,恐ろしいほど自然なことだが…。

 二人の電話の中で,雪菜は中学のときの「仲良し五人組」の崩壊とその後の陰湿な仲間外れのことを話す。「『仲間外れがこんなにも怖い』ってことまで思い出させるなんて」「北原くんも,冬馬さんも大好きなのに…。二人が仲良くすることだって,嬉しいはずなのに…」「でも,そこにわたしがいないことが,なんだか…なんだか,なんだか,ね」「お祭りの後も,ずっと騒いでいたい。三人でいたい。お祭り前の日常に戻るのは,もう嫌。だけど,仲間外れは,もっと嫌,なの」と雪菜が言うのに対して,春希は「俺は絶対に小木曽から離れていったりしない!」と答え,二人の中で「約束」が交わされる。雪菜のこの『仲間外れがこんなにも怖い』という思いは病的と言っても差し支えないと思う。なぜなら学園祭後,かずさの気持ちを知った上で,仲間外れというトラウマはもう嫌だという思いに抗しきれずに,春希と恋人同士になり「バランスを取った」のだから。病的な強迫観念がなければ,常識ある普通の人間は,このような行動はしない。この電話の中で,さらに雪菜は自分のことを「雪菜」と呼ぶように春希に強いるが,これは実に効果的な作戦で,さすがという他はない…。

 三人の男女関係の中で,1組のカップルが生まれた場合,元のように仲良く続けていけるのは,特殊な場合以外は不可能だと思われる。それこそ度量の大きな人間同士でないと無理な話だろう。その場合でも,好きな相手に対する感情と友人に対する感情は違ってくるのが当たり前だ。この三人の場合,雪菜と春希はいいとしても,かずさはそれほど器用でもないから,そもそもこの三角関係は誰かが不幸になる運命にあることになる。そもそも三角関係が生まれてしまったのは,春希が二人を同好会に半ば無理やり誘ったことにその根本原因がある。雪菜を誘ったのは,音楽室と屋上での奇跡的な三人の初セッションのときに,半ば諦めかけていた完璧にハマるボーカルをみつけたという感動と,学園祭まで残された時間はないという,個人的かつ委員長的感情からというのが大きいと思われ,決して雪菜に特別な好意を持っていたからではない(雪菜がスーパーの店員をしているのを1年以上前から知っていたが,それは異性として特別に意識していた訳ではないことは本文中に示されている)。かずさを誘おうと思っていた訳でもないが,そもそも同じクラスになったときに一目惚れしていたのは春希であり,第二音楽室の主がかずさだと知ったとき以来,絶対に彼女は誘いたいと思っていただろう。雪菜が入会し,次にかずさを誘おうとする春希のセリフに,「絶対に諦めない。だって,俺にはどうしても,二人とも必要なんだ。どっちも大事なんだよ」とあるが,雪菜とかずさに対する心情が違うことを読み解くことがとても重要だ。そして,雪菜に対する“隙”を重ねることにより,三角関係はより強固なものとなっていく。“隙”は春希のお節介な性格によるところが大きいが,人はそれを“優柔不断”という。二人でコッソリと練習していたのが雪菜にバレた事件の後,春希は毎晩雪菜を家まで送ることを「駄目元アタック」するが,この時点で二人に対する気持ちは,55:45ぐらいになっているのかも知れない。相手は学園のアイドルで脈がありそうだし,かずさの気持ちも分からないし,初心が揺らぐのはまあ当然かも知れない…。どっちが55かは敢えて書かないが,この力関係は本作の1つのエピソード(Coda 雪菜ルート)以外では崩れることのない絶対的と言ってもいいものだ。ある女性への思いに春希が意図的に蓋をして,その力が弱くなっているようにみえるシナリオはあるが。

 かずさが風邪で倒れ,春希が雪菜の指示でボンゴレ雑炊を作るときに,雪菜と春希が学園祭代休の月曜日に,雪菜の家で同じものを作る約束をするのをかずさは聞いてしまう。雪菜の積極的なアプローチに刺激され,また熱で気持ちが弱くなっていたのもあるだろうが,かずさは今までのキャラとは違う,ちょっとした甘えや素のわがままを春希にみせるようになる。その延長線が,1回目には明かされない学園祭直後のかずさのあの行動となる。

 一番の盛り上がりは,学園祭でのライブだが,なぜか『届かない恋 Live at Campus Fes』は一度もプレーヤーが聴くことなく,ICは終わる。いいところを切り抜いて別の小話として出しているので,これは多分に商業的意味合いによるところが強く,プレーヤーにとっては後味が悪い。追加のドラマCDである「祭りの日~舞台の下の物語~」に切り出されており,そこではほぼ通して音声を聴くことができるので,消化不良に思った人はそちらを聴くといいだろう。会場の雑音や観客の声が追加されていたり,そちらのほうが臨場感があるのは確かだが。

 (7おわり)
8 学園祭後,春希と雪菜が付き合うことなり,「3秒ルール」というのを決めている。これは「(かずさの前にいるときは)二人きりでいるつもりにならないこと。けれど,あまりよそよそしくして,冬馬に余計な気を使わせてもいけない。『かずさ』と『雪菜』の友情のためにって,俺たちが話し合って決めた,3秒ルール」というものらしい。これに従い,かずさに勉強を教えるシーンでは,こたつの中で3秒間だけ手をつないでいる。これは二人と一人の関係において,一人への配慮なしには三人の関係が成り立たないからで,日本人らしい気配りだと感じる。ちなみにCodaかずさエンドでは,春希とかずさが二人,雪菜が一人となるが,二人は雪菜が住んでいる,雪菜との思い出がたくさんある日本では愛を育まないと決めている。

 春希と雪菜はこのままの関係で続けていければよかったのだが,そもそも春希のかずさへの思いはずっと燃え続けており,「ただ無性に気に入らなかった」母への棘のとれた素直な本当のかずさに,より心を惹かれるところもあり,三人の関係は段々と危ういものとなっていく。依緒が春希に,なぜ告白を卒業まで待てなかったのか問い正すシーンがあるが,春希はその質問に思い悩み始める。そして「俺さえ吹っ切れば,みんな笑って,この時間が続いていくんだ」と自分に言い聞かせる。春希を考えるとき,本当の思いと理性が示すあるべき姿との葛藤が常にあり,理性が勝てば雪菜を,本能(本心)が勝てばかずさを選ぶ傾向がある。この理性的な思考は,かずさの想いを春希が知らないからできることで,かずさの本当の想いを知ったとき,高校生の春希は理性で抑えることができず,IC終盤でみられるように暴走することとなる。温泉宿での春希の回想シーンで,二人への思いについて言及するところがある。「(今の冬馬は)今までの俺の審美眼を馬鹿にするように,自分の新しい美しさを,これみよがしに俺に見せつける。その傍らで眠る雪菜は,凄く綺麗で,俺だけが知ってる可愛さもあいまって,ずっと抱きしめていたいくらい愛しく感じているのに。なのに,目の前にいる,俺の友達に,俺の彼女の友達に。そんな心からの憧憬を感じてしまう」。愛しいと憧憬とは,もちろん異質のものであり,二人のことを違った感情で愛しているということを示している。一方で雪菜は,春希とかずさに対してほぼ同じような感情で好意を寄せており,雪菜がかずさを強引に誘い,春希の浸かる温泉に押しかけるのは,雪菜のかずさに対する仕返しなんかではなく,三人でいるときはかずさにも平等に春希と居て欲しいからという思いからだろう。また,春希のことを奪った罪滅ぼしという気持ちもあるに違いない。

 温泉旅行の帰り,かずさは言いようのない寂しさと「心を抉られる痛み」に襲われる。雪菜とともに雪菜の家の前で車を降ろされた春希も,言いようのない寂しさを感じ,それから逃れるために雪菜の体を求める。春希のこの行動は,物語中に何度か出てくる。その寂しさはかずさと別れたことによるが,春希の理性はそれを認めたがらない。雪菜はそんな二人の気持ちを,恐ろしいほどよく知っている。「なんだか,その…。今は,全然我慢できなくて」「どうして?」「それは…」「わかんない。わかんないけど…っ」「そっか…」「わかんないんだったら,しょうがないよね?」「雪菜…?」「じゃあ…いいよ?…外だから,服の上でお願いしたいけど」というセリフは,全てを理解して読むと怖すぎる…。その後の「ね,どうしよう?わたし,春希くんとつきあい始めて,どんどん悪いコになってきてるよ…?」「…春希くんのためなら,もっと踏み外せるって,そんなこと,思っちゃってるよ?」というのは,もちろん外でそういう行為を行っているからだけという訳ではない。「二人の気持ちも分かってるのに,なのに春希くんをかずさに返せなくて,さらに深い関係を求めてるよ」という気持ちが暗に隠れている。普通の人にはそれほど相手の気持ちは読めないから,罪の意識を感じることがないようなことも,雪菜の場合は鋭いから故,敏感に感じてしまう。--“本心から逃れるために春希は雪菜との関係を深めようとし,雪菜もそれに応える”--。三人の心情は変わっていくが,この構図の繰り返しがClosing ChaptorとCodaの基本路線となる。しかし,雪菜が思い描いていた三人の関係は,「二人が…悲しいくらいに真剣だったってことかな」という予測しきれなかった因子により,違う姿へと形を変えていく。

 二人の関係を祝福するために,自ら身を引くことを選んだかずさは,母曜子の誘いもあり,オーストリアのフリューゲル師の弟子入り試験を受けることを決意する。本当は,身を引くという綺麗なものではなくて,やり場のない感情を抱えたまま,二人から“逃げる”ことを選んだのだ。その背景には,友達の恋人を取るなんてのは最低だという思いが強くあっただろうし,雪菜にはどうしても敵わないという思いもあったのだろう。また高校時代の自分に自信が持てず,自分には春希を愛する資格はないと思ったのかも知れない。かずさは結局日本を離れるが,ピアノと真剣に向き合う強い動機を得てのことであり,結果的によかったのではないかと思える。かずさは,これから日本にはいない自分は身を引くことで,自分の思いを告げることもなく,今までの春希と雪菜の関係で居て欲しいと願っている。それが二人のためを思って出した,かずさの結論だったのだろう。本当はそうしたかったはずだ。しかし,かずさが自分の元から去って行こうとしていると気付いた春希は,居てもたってもいられなくなり,雪菜の誕生日パーティーにも関わらず,かずさを求めに空港まで行ってしまう。雪菜に対しては嘘をつくことになり,その嘘によって心身症の症状が起こってくる。春希と二人で祝うために,たくさんの手料理を作って待っている雪菜の挿絵が出るが,このシーンは本当に胸が痛い。

 この後からの展開は,本当に衝撃的で,感動の連続と言っていい。終盤のかずさの変わりようは凄まじく,最初は予想していなかっただけに,衝撃を受けた人が多いのではないか。個人的には,雪菜が言うように,「反則的にかわいい」と思える。「After All~綴る想い~」はかずさの心情を歌ったもので,こんな熱い想いを持っていたことを知ると,心が揺り動かされる。数あるWhite Album 2の名曲の中でも,最も好きな曲だ。春希ともう会えないのに,関係を持った後,「あたし…言えばよかった…。カッコなんか,つけなきゃよかった…」「馬鹿だ,あたし,馬鹿だ…っ」と後悔するが,そう全ては遅すぎた。明日の午後2時には日本を出発しなくちゃならない。これは完全に作者の策略であり,三角関係の泥沼を描くために,春希とかずさが二人だけで強く結ばれるようであってはならないのだ。そして,「別れても,ずっと好きだって,誓った。雪菜を……本気で裏切った」というのは予定調和の筋書きと言える。

 前述のように,春希と雪菜が付き合い始めたのは,仕方ない一面もある。春希はかずさのことが最初から好きだったが,その想いが空回りのものだと思っており,それは『届かない恋』の詞によく描かれている。このときのかずさは素直になれず,春希に自分の気持ちが伝わらないように偽っており,どう考えても二人がこのまま結ばれることは難しい。雪菜のセリフに,わたしが余計なことをしなかったら,かずさは少しずつ春希くんとの間を埋めていったかも知れないのにとあるが,このICのように強烈に結ばれる関係になったとは思い難い。やはり雪菜という触媒の働きは大きく,彼女を通してこそ二人は本当に結ばれるのでないかと感じる。ただ,雪菜を傷つけてしまうという思いや罪悪感は二人にとって最大の足かせとなり,これから何度も物語中に影を落とすこととなる。罪悪感を持つのは仕方がないが,この物語のようにいつまでもそれを持ち続けることは健全なこととは言えない。どこかで気持ちを切り替えないと前に進めない。

 (8おわり)
9 雪菜が春希のことをどうして好きになったか,IC中に直接はあまり触れられていないが,「祭りの前~ふたりの二十四時間~」に,雪菜自身が語るセリフがある。「他の男と違って女の子としてみてくれなかったから。それが癪に触って,どうしても振り向かせてやろうって思った。かずさとは全く逆の理由」だという。かずさの理由を正確に見抜いているのが怖い…。和泉ルートにも,バーにて,春希への気持ちを語るシーンがある。「誰にでも平等に優しくて,けれどわたしには,ほんの少しひいきしてくれたりすると最高かな」「わたしはね,彼女(かずさ)を優しく見つめてる彼が好きだった」「わたしはね…,彼がわたし以外の人を好きでも構わなかった」「それでも,わたしのことも好きでいてくれるなら。彼と彼女の世界に,わたしもずっといさせてくれるなら」「彼が後悔に押し潰されて,壊れてしまうくらいなら,そのほうが,ずっとずっと,良かったんだよ」。要するに,最初は積極的に好きという感情ではなく,むしろかずさを通して春希のことを好きになっていったようだ。Coda共通ルートでは,「わたしね,春希くんに,ほんの少しだけ,お父さんを重ねてみてたのかも」「真面目で,厳格で,融通が利かなくって…。けれどとっても優しくて…。わたしのこと,一生懸命大事にしてくれる」とあるが,ICの時点でそう思っていたかは分からない。そして,彼女の「最初の頃の」“その程度の好き”という感情が,想い合う二人の間に分け入っていくことで,この物語の基盤である三角関係が出来上がることになる。雪菜をフォローするために書くと,かずさから春希を奪った後,春希のことを本当に好きになっていったのは確かで,それは「歌を忘れた偶像(アイドル)」等に記されている。ICの頃の雪菜は,春希とかずさを“同じように好き”だったと思える。学園祭後二人が付き合うことになったことを春希がかずさに話した後の電話で,春希を奪った罪悪感から,雪菜はかずさから嫌われるんじゃないかとずっと泣いていたり,その翌日屋上でかずさとの関係を元に戻そうとしていているのが,その現れと言える。

 かずさが春希のことをどうみていたかも,IC中にはあまり触れられないが,行動の端々から感じ取ることはできる。CodaかずさTrueエンドに,かずさ自身が語る言葉があるので,それを引用してみる。「昔から,お前に近づいてくる奴ってさ,大抵,最初は都合良く利用しようって連中ばかりだった」「けど,お前がいつまでもそんなだからさ,いつの間にか,皆がお前を信頼していく。…心の底から,頼っていくんだ」「最初は見下してた。いい気味だと思ってた。すぐ利用される奴が馬鹿なんだから仕方ないって」「けど段々,お前が騙されることに苛ついていって,そのうち,お前の周りに人が集まっていくのにますます苛ついていった」「あの時は,その気持が何なのかわからなかった。ただイライラして,意味もなく腹が立って…寝てるふりして,お前の横顔ばっか見てて」「そんなの思い込みだって。お前,俺のことひいき目で見すぎてんだよ」「そうだな…あたし,お前のことひいきしてた」「あたしを見てくれるのがお前しかいなかったから,あたしもお前しか見なかった」。かずさは結構早い段階から,春希のことを好きだった。雪菜より早く。どういう経緯で春希のことを好きになっていったのかは,『雪が解け,そして雪が降るまで』に詳しく書かれている。ICでのかずさは,基本的には春希の前では「お前のこと,興味ない」って必死で悪ぶりを続けている。自意識が強く,カッコつけているだけというのが多いのだろうが,自分のことが嫌いだったかずさは,春希と恋愛をする資格はないと思い込んでいたのかも知れない。あるいは徹底的に相手を遠ざけ,それでもこちらに擦り寄ってくるのか試しているのかも知れない。本心と態度が違うから,そこのところを理解しないと,単に「つかみどころのない,素直じゃない女」と映るかも知れない。学園祭後は,雪菜のことを守るために,そう強がっているともみえる。そして,かずさは雪菜に会った瞬間から,同じく春希が好きだと感じ取っていたという。それは「Twinkle Snow~夢想~」に示されている。雪菜を警戒しており,それは春希を取られてしまうかも知れないと感じていたからだ。Twinkle Snowは雪菜の夢という設定なので,「そう雪菜が思っていた」ということかも知れないが。

 春希は最初からかずさに心を寄せている。Coda浮気エンドの中の春希の告白によると,かずさのことを好きになったのは「顔が好みだったからだよ!一目惚れだよ!」という。一目惚れで一瞬にして心を奪われ,「届かない恋」にあるように,孤独なフリをしているのはなぜだろうと気になり,心に触れさせない頑なな態度が益々気になり,お節介を焼かずにはおれない性格に火が付き,ハマっていったのだと思われる。雪菜のことは,最初は恋愛対象とは見ていない。にも関わらず,雪菜の告白を受け入れ,キスをしてしまうことにより,三人の関係は複雑化していく。春希は基本的に惚れた相手に対して一途だが,雪菜と付き合っているときの行動は決して本心からのものではない。キスの直後にかずさのことを思うシーンが一瞬だけ挟まれるのがそれを物語っている。雪菜を好きであったのは確かだが,それはあくまで一般論の好きという感情で,かずさに対するように特別なものではなかったと思われる。春希を擁護するために書くと,ライブが終わった直後のフワフワとした心境で,学園一のアイドルから告白され,キスを迫られたら,恋愛経験の無い,恋愛に関して興味ありありな高校生にとっては,片思いと思っている相手のことを思い続けるのは,非常に難しいことだと言わざるを得ない。巧妙に仕組まれた作者の罠に違いない…。

 (9おわり)
10 犯人探しみたいなことはしたくないが,この物語をややこしくしている発端は,学園祭の後,雪菜が春希を“奪う”行為にあるのは間違いない。実際は春希の意思に任せているが,そう仕向けた罪は重い。しかも,全てを知った上で。彼女のその行動がなければ,春希が罪悪感に潰れることもなかったし,かずさの罪悪感も生まれなかったし,その後の数々の問題も起きなかったのは明白だ。Coda浮気エンドの後に,春希が壊れることもなかった。しかも,それは「仲間外れにされたくなっかたから」という理由が大きいとは…。しかし,それが悪い行為だと言っている訳ではない。それは後で詳しく述べる。

 「祭りの前~ふたりの二十四時間~」では,それ以外の理由も明かされる。学園祭直前24時間のドラマで,雪菜は「届かない恋」が誰に対して春希が書いたものであるかを,いつものように敏感に察知し,その歌詞の解釈をかずさに聞こうとする。しかし,かずさは全く理解してないように思えた。そして二人だけのミーティングのときに,雪菜は春希のことが好きだとかずさに宣言する。恐らく,かずさの恋心を刺激し,その恋を応援したいという意図もあったのではないかと思う。雪菜はかずさが誰のことを好きかと聞くが,かずさは言う寸前のところにいくものの,結局「そんな奴はいない」と答えてしまう。雪菜には当然その7文字は分かっている。その後の二人の会話。「ずるーい,またはぐらかして。そんなこと言うと,とっちゃうぞ」「勝手にすれば」「いいの?」。これにより,雪菜の行動はかずさの許可の下であるとも解釈できる。しかし,好き同士の間に割り込んでいったのは雪菜であるという事実には変わりはない。これは,かずさが戦わずして逃げ出したことにより成立した,ともいえる。かずさが後に告白するように,その頃の自分に合った,卑怯な方法を用いて戦ったとはいえるのだろうが。「祭りの前~ふたりの二十四時間~」では,かずさの気持ちを汲み取った雪菜は,「届かない恋」を,かずさを思って,春希の気持ちになって歌うと宣言する。

 雪菜の思惑は成功し,「精神的に追い込まれていた」かずさは,コンサート後,夕陽の差す第二音楽室で,寝ている春希にキスをする。その光景をたまたま目撃していた雪菜は衝撃を受け,応援したいという気持ち以外の感情(嫉妬心や春希に対する愛情)が湧き上がり,それ以外にも仲間外れにはされたくないという強迫観念があり,理性と葛藤しつつも,その強い思いに逆らえず,春希にキスを求めている。本来,理性的であるはずの雪菜は,「仲間外れになる」という状況下では自分を見失い,それが雪菜の最大の弱点だと言える。春希が目覚めるまでの数十分間の葛藤は,「祭りの後~雪菜の三十分~」に切り出されている。

 常識的に考えて,雪菜の行動に問題があったのは疑いようがないが,別の捉え方もできる。雪菜が触媒として働かなければ,そもそもかずさと春希はあっさりと別れていたかも知れず,雪菜は二人のためによい行動をしたとも考えられる。人間の考えでは,善悪は決められない。雪菜抜きに,「Twinkle Snow~夢想~」のような展開になるのは,かずさのプライドが邪魔して難しいだろう。春希が告白すればいいのだが,かずさがほとんどそういう隙を見せないので,春希も何かのきっかけがないと自分からは告白しにくかったに違いない。Closing Chaptor (以下CC)の時間軸で,かずさのピアノが飛躍的に上達したのも,この体験があったからこそである。春希が雪菜のキスを受け入れたことが悪いようにも思えるが,それは前述のように仕方がなかったと思われる。春希の意思が弱かったとはいえるが…。

 このように,泥沼の三角関係の原因は,雪菜だけに責任がある訳ではない。春希が心変わりをしなければいいことだし,かずさが雪菜を無視して春希に思いを告白すればいいことだ。しかし,それらは非常に難しいことで,このあたりの設定は実に自然でうまい。そもそも,誰かが悪くて,そのせいでこうなったなどと犯人探しをするのは無粋とも思える。なぜなら,ICの関係はそうなることが自然で,それが一番よかったように思えるからだ。

 この物語の面白いところは,二人の間に分け入った雪菜だけではなく,春希も,かずさもそれぞれが,自らの責任と信じ,同じように深い罪悪感を抱くことだ。そもそも作者の意図として,「単純なストーリー展開は選びたくなかった」とあるので(CCで「コンサートに行く」という選択肢が選べないことに関する,作者へのインタビューだったが),こじれた状態を作ることが,天(作者)から与えられた雪菜の使命だったのだろう。斯くして,三人には逃れようのない罪の鎖が与えられることになる。愛する人のために,愛するもうひとりを裏切らないといけないという。それは,相手に対して誠実であればあるほど深く食い込むという呪いが込められた。その呪いは罪悪感を抱きやすい人間にしか効かないもので,三人の性格は必然的にそのように設定されていく。Closing共通ルートでの話になるが,特に春希は,自分の罪に関しては容赦なく,そして雪菜の罪を決して認めない。しかし,それは美しい姿では決してなく,事実から目を背け,自分だけの論理(ファンタジー)にはまっているようなものだ。自らの掘った穴に自らはまりこみ,苦しみ続けるのをよしとする人間は,実は周りの人をも不幸にしていることに大抵気づかない。小乗善であり,真の善ではない。春希を反面教師として欲しい。その点をよく理解しておかないと,この物語を手本に間違った考えをするようになる若い人が出てくるかも知れないので,その点は強調しておきたい。自分の罪は認めるが,相手の罪は認めないというのは,ねじれた自虐意識であり,相手が罪を認めて欲しいと思っている思いを無視する行為であり,真実から目を背けたひとりよがりの偽善である。”自分の罪を認め”,そして“相手の罪も”正しく認めてこそ,相互理解でき,それが正しい人間関係に繋がるものだ。自分の罪を認めず,相手に罪をなすりつけることではない。

 (10おわり)
11 ICは結局三人がバラバラになって終わるが,お花畑的な意味で,最も理想的な展開のひとつは,「Twinkle Snow~夢想~」に描かれている。これは春希やかずさの夢ではなく,ICから三年後の雪菜の夢であるというのが面白く,雪菜が二人への罪の意識から,本当はこうしておけばよかったという無意識の思いかも知れない。最後の最後に,また二人の間を引き裂くような行為をしてしまうが…。

 そこでは雪菜がキューピット役をし,二人を結びつけており,春希とかずさの甘辛い関係も描かれている。雪菜はそういう役回りのほうが似合っているのではないかと,個人的には思う。かずさは母親の薦めもあり,音大への進学を希望しており,その推薦を勝ち取るために,コンクールに出場することを決意している。雪菜は,「一番好きな人どうしが一番好きでいられる関係が一番だって,信じてるから」と言うが,ICで本当にその言葉の通りの行動をしていれば,泥沼の物語とはならないから,そもそも物語が深まらず,こんなに注目されることもなく,ここで感想も書いていないかも知れない…。そのサブエピソードでも三角関係の苦悩は描かれている。かずさは,春希が雪菜に取られるのではないかと不安に感じており,春希はお節介からなのか雪菜に接近するのを止めようとはせず,雪菜は春希のお節介に甘んじてはいるが,かずさと春希の関係を壊すようなことはせず,春希と距離を置こうとする。三人の関係に限界を感じていた雪菜は,依緒と武也の助言もあり,今度は「五人の関係」を受け入れることを決心する。「五人の関係」から,さらに大きな関係の中で,春希とはもっと緩い関係に改め,二人と接していこうと決意する。ここまでの展開は,個人的には理想的に思える。しかし春希は,雪菜と距離を置くということができない性格らしく,かずさとは深い関係(肉体的にも)で結ばれた上で,他人を寄せ付けないところのあるかずさと雪菜の間を取り持つ役をしようとするから,これからも三人の関係を続けようと,雪菜をかずさの家に誘おうとする。三角関係の中心にある春希のそんな性格は,恐ろしいほどよく設定されていると思う。しかし,春希のその提案は,雪菜の本当の気持ちとその苦悩を知らないからであり,きっぱりと関係を切ることこそが真の愛情のようにも思える。ここでも雪菜は賢明であり,その関係が続かないことを知っており,玉砕覚悟で春希にキスをし,三人の関係を終わらせようとする。万が一,春希が自分に気持ちが傾いて,彼と抜け駆けができるかも知れないことを,かすかに期待しながら…。ここで目が覚める。夢であっても,玉砕覚悟ではあっても,最終的には春希を奪おうとするということは,心の奥底にはそういう欲求があるということなのだろう。それを実際の行動に移すかは全く別の問題だが。

 (11おわり)

Closing  ~~ 共通ルート ~~

12 このルートでは,春希は雪菜を遠ざけようとし続け,しかし雪菜はそんな春希を思い続ける。麻理さんの言葉を借りれば,「(北原には)精神的自滅願望がある…ような気がする。けど,過剰なまでの常識人としての資質が,そういうとこを覆い隠してる」。これがICエンディング後の春希だ。なぜ春希が三年間もそんな自己破滅的な,後ろ向きの行動を取り続けたのか。1つには,IC最後にある,「一度最低の裏切りをしてしまった相手だから,最低を貫かなくちゃいけないから」,という思いはあるだろう。加えて,雪菜に対して冷たい態度を取り続けることで,彼女が春希を許すのを諦め,憎んで欲しい,そうすることで自分の罪が幾分か和らぐという思いがあるようだ。そういう態度を取ることで,彼女が春希のことを諦め,違う男のことを好きになってしまっても,それは仕方ないと春希は思っているだろう。春希の親友である友近浩樹が雪菜に告白したときは,そんなことは絶対に許せないと言ったが,もし本当にそう思っているのであれば,彼女を遠ざけ続け,それでも違う男の元へは行かせないという,雪菜にとって地獄のような日々を与えるだけの,最低の男になってしまう。それに「誰かを好きになることも,誰かに好きって言われることも,怖くて,ほんと怖くてさ…」と,矢田さんに今までのいきさつを話すシーンでは語られている。要するに,IC終盤の出来事がトラウマになっており,また,自分は幸せになってはいけない人間だと自分で自分をおとしめており,鬱状態の悪循環に陥っている。自分で自分を苦しめるのは構わないが,そういう態度を取ることで雪菜も苦しめていることに早く気づいて欲しい。春希も分かってはいるが,どうしたらいいか分からず,トラウマの恐怖もあり,どうしようもないのかも知れないが…。それでも自分のことに捕らわれるのではなく,相手のことを思って欲しいとは思うが…。

 そんな春希だが,それでも雪菜は春希の側にいようとし続け,「俺のために,俺の目の前でいつでも笑ってた。本当の心が透けて見えるくらいに,寂しい笑顔で笑ってた」と気丈に振るまい続け,そのことが春希の罪悪感を益々強くしている。春希がずるいのは,そういう後ろ向きの行動を取り続けたにも関わらず,雪菜が自分から離れていかないことを知りつつ,雪菜を完全に切ることはせず,その中途半端な関係を続けてきたことだ。この辺りの後ろ向きの春希は,委員長キャラというより,現実逃避の「Coda浮気ルート」の春希に似ている。何が正しいのかは一概には言えないが,そんな後ろ向きの関係を続けるぐらいなら,スパッと(かずさまたは雪菜,あるいは両方との)関係を断ち切って前に進むべきであろう…。

 避けようとしていた雪菜のことを,春希がふと振り返る場面がある。「…雪菜から逃げた。あれだけ酷い裏切りをされたのに,何事もなかったかのように,俺に微笑みかけてくれた。俺が逃げても,その距離を無理やり詰めようとせず,けれど自分からは遠ざからず,俺のこと,優しく見つめてくれた。そのたびに俺は,嬉しくて,胸がときめいて,その綺麗な姿と心に触れたくて,自分の意思を制御できず,ふらふらと彼女に近づき…。すぐ近くで,その思い出と想いの深さに触れた瞬間,自分の残酷さを思い出し,彼女の目の前から逃げ出した。そんな無情なループを何度も繰り返し,自分だけでなく,雪菜が疲弊していくのを目の当たりにし…。俺は,雪菜の可能性を奪った俺を憎んだ。俺の憧れの歌姫の声を奪った俺が許せなかった。だから俺はもう,雪菜に呆れられるしかない。嫌われてしまわなくちゃならない。憎まれるべき人間だ。付属時代の,誰のものでもなく,そして皆のものだった,本当の小木曽雪菜に戻ってもらいたいから。あいつみたいに,飛び立って欲しかった。俺みたいな人間に囚われて欲しくなかった。そしてもし,そんな俺の願いが叶えられたなら…。その時,俺はようやく,立ち直るのにとても長い時間がかかるくらい,深く落ち込むことができるんだろうって,思う」。なぜ,雪菜に近づいたときに,春希は自分の残酷さを思い出すのか。それは現在進行形で,かずさを思っているからに他ならない。あの残酷な仕打ちを,また雪菜にしてしまうかも知れないという恐怖心から,雪菜と距離を取ってしまうのだろう。

 (12おわり)
13 しかし,ここまで後ろ向きのことに固執し続けるのは異常と思える。いつも理想論を振りかざす春希らしくない。春希の中に今でもかずさへの思いがあるなら,雪菜とはきっちりとケリをつけて,前に進む行動をとるべきではないか。逆にかずさのことをきっちりと諦め,今までのことは水に流して,雪菜と早く新しいスタートを切るか,はたまた二人以外の人と付き合うか,いずれかにすべきではないか。三年間もずっとそんなマイナスの気持ちを抱えたままでは,本人が不幸になるばかりではなく,周りの人間をも不幸にしてしまうだけだと,ついつい考えてしまう…。

 次に,春希とかずさがなぜ5年間(Codaも含めて)何も連絡を取り合わなかったのかについて,考えてみたい。互いに深く愛し合っていることを知り,空港で劇的な別れをした後,なぜ二人が連絡を取り合わなかったのか,初めてこのストーリーを読んだときに理解しにくい点があった。確かに,雪菜に対して後ろめたいという気持ちはあったのは分かるが,それだけでずっと連絡も取らないものだろうか?かずさが逃げたとはいえ,引き裂かれたに近い状況と言えるのに。春希は,かずさに会いにヨーロッパに行くことを,少しは考えていたようだ。それはCC共通ルートで,小春が「20万用意しないと…」と言ったときに,「20万って…。ヨーロッパにでも行くつもりか?」と答えているからだ。しかし,それが実行に移されることはなかった。また,かずさからの連絡もなかったことが,病気を告白する曜子さんとの会話の中で示されている。「(かずさは)5年間,音信不通だったんですよ?どうやって信じろって言うんです!?」と。

 かずさの心理を推測すると,雪菜を裏切ったのは自分だという気持ちと,まだ自分に自信を持てておらず,そもそも雪菜に勝てるはずがないという思い込みがあったのかも知れない。今,自分のやるべきことはピアノという使命感と,ピアノを通してなら春希と会話できるという満足感もあったのかも知れない。少し横道に逸れるが,学園祭前後の半年間の思い出を反芻するうちに,コンサート後の自分のあの「卑怯な行動」をひょっとして雪菜にみられていたかも知れないと思い至り,Coda共通ルートではその事実を確かめている。少しでもその可能性があることに気づいたときのかずさの動揺は,如何ばかりだっただろう。しかし,それに気づいたとしても,その間に雪菜と春希が既成事実として恋愛関係を築いているはずで,今更自分が割り込んでいく訳にはいかないと,自分を犠牲にして二人のことを思っていたのかも知れない…。と,いろいろ考えてはみたけれど,基本的に臆病者だし,ただ単にカッコをつけていただけなのかも知れない…。

 春希に関して言えば,今でもよく分からない。逆に言えば,その部分の動機づけや説明が不十分であると思える。鬱を含めた前述のような気持ちがあるのは分かるが,一時の辛い気持ちから逃げていても問題は先延ばしになるだけであり,より深く傷つけてしまうだけだというのは,頭のいい春希に分からないはずはない。雪菜を遠ざけ続け,雪菜は春希を思い続けた,お互いの暗澹たる三年間を思えば,残酷かも知れないけどきっちりとケリをつけて,前に進んだほうがはるかにマシに決っている。後ろ向きの感情に囚われ続けることで,春希を,雪菜を苦しめ続ける(CCエンディングの盛り上がりに向けて),作者の策略とも思える。物語とはそういうものだから,作者に文句を言う気持ちはさらさらないが…。自然に考えれば,あんな別れ方をして,お互いに想いあってるのに,何も連絡を取らないということは考えられないと,個人的には思う。直接行くのは難しいとしても,連絡を取る手段なんていくらでもあるだろう。冬馬曜子オフィスを通すのが一番確実で,曜子も春希のことをかずさの恋人だったと認識している。かずさが色っぽいピアノを弾くようになったことを曜子は一番知っており,春希との付き合いを反対するとは考えにくい。そのような春希の前向きな行動を邪魔するのは,泥沼の三角関係を維持したいという作者の思惑以外にはないのではないかと思ったりする。春希がそこまで自滅的で,相手のことを思えない人間だとは思えないからだ。相手のことを思えば,雪菜をきちんと切って,かずさの元に向かうか,他に向かうかするべきだし,雪菜を選ぶのであれば過去のわだかまりは捨て去って,なるべく早く新たに絆を深めるべきだ。それもできないほど,過去や現実から逃げ続けて,鬱状態に入っているという設定なのかも知れないが,春希の性格を考えると,それはどうもしっくりとこない。しかも三年間も…。どっちも選べないほど優柔不断ではないだろうし,そもそも春希の気持ちは揺らいでいない。

 (13おわり)
14 ずっと逃げ続けていた春希だったが,武也や依緒,それに小春や麻理さん,千晶たちの温かい介入もあり,コンパでの雪菜失踪事件をきっかけに,雪菜と少しずつ関係修復を努める前向きな気持ちに変わり始める。あまりに遅いとは思うが…。今まで封印していた三年前の想い出を,雑誌の編集を通して振り返る機会を与えられており,そんなタブーに触れられたことで,過去と逃げずに向き合い,そのことが現在・そして未来に対して前向きな気持ちを吹き込んだのも大きいのだろう(タブーはまだ壊せていない)。かずさへの想いはまだ確かにあるけど,麻理さんに三年前のこと,かずさのことを客観的に話せるようになっており,大きな進歩だ。逃避ではなく,現実的な行動をすることに抵抗がなくなって来たのだろう。無限ループからの脱出をやっと決心できるようになったようだ。

 春希は,雪菜と毎日メールを続けることで,少しずつその距離を縮めていく。それはまさに雪菜が望んでいたことで,雪菜は嬉々としてそれに応える。そんな中,初めて書いた記事が,かずさが表紙を飾るアンサンブルに載ったとき,春希は雪菜にその本を見せるのか選択を迫られることになる。それは,相手に誠実であるために,付き合いはじめたことを真っ先にかずさに伝えた,ICでの選択と重なり面白い。

 様々な人の根回しがあり,クリスマスイブを高級ホテルのディナーで過ごすことになった春希と雪菜。二人の会話や態度は,傍からみれば恋人同士のようだが,心の中にはまだ距離感があり,無理してお互いの気持ちを騙し続けている状態であり,まだ危なっかしい。アンサンブルの記事を雪菜にみせた後,春希は「今の俺にとって,冬馬かずさってのは,そういう相手なんだ。世間を驚かせて,俺が評価されるための取材対象」「この仕事やってみてわかったんだ。俺があいつに抱いている感情って,いつの間にか,こんな風に変わってたんだなって」と言う。これは明らかに嘘だ。この記事を書くことだって,散々悩んで,苦しんで,やっとタブーの部分に触れたことができたのに。雪菜との関係をこじ開けるために,彼女にだけは誠実でいたいと,正直に雑誌のことを話した春希なのに,この核心的な嘘はひどい。それほど雪菜のことを大切にしたいと思っていたのかも知れないが,そうであるなら,「彼女にだけは誠実でいたい」という自分が立てた直前の誓いすら反故にしてしまう行為であり,支離滅裂とも思える。雪菜はそのことを当然のように見抜いている。しかし,言いかけた言葉を,当り障りのない別の言葉に置き換え,表面上は何事もなかったかのような態度を示す。かずさへの気持ちに対する雪菜の問いを,春希は頭の中でシュミレーションした通りに答え,そして三人の関係をリセットしようと提案する。二人の中でかずさの存在を記憶から消していこうと。しかし,これも無理な話で,こんな計画がうまくいくはずはない。雪菜は,そのことに対して最低だと思いつつも,違和感を感じつつも,三年間ずっと触れられなかった,ずっと我慢し続けてきた春希への思いのほうが溢れだし,二人はキスをする。そして,「春希くんがね…。あの頃の三人をリセットしようって言うんなら」「わたしはね,この,空白の三年間を取り戻さなくちゃならない」「春希くんが好きで好きで好きで好きで,片時も離れたくない,甘えん坊のわたしに,早く戻らなくちゃ,ならないの」と,急速に距離を縮めようとする。シャワーを浴びている間,雪菜はかずさに,「……ごめん,かずさ」「わたし,今日,あなたから春希くんを奪う」「もう誰にも,渡さないよ」と言い,春希は涙を流しながら,かずさに別れを告げる。二人とも,ここにいないかずさのことを気にかける。

 自分がシャワーを浴びている間に,春希がアンサンブルのかずさの記事を再び読んでいたことに気づいた雪菜は,春希のかずさへの想いが三年前となんら変わっていないという事実に拘ることがやめられなくなり,シャワーから上がってきた春希を突然拒絶する。春希はそれでも,雪菜のために,かずさのことは忘れたと嘘を突き通そうとするが,雪菜は自分のためについてくれた嘘とは知りつつも,そんな嘘つきの春希を受け入れることができず,とうとうキレてしまう。雪菜はかずさを通して春希のことを好きになっており,それに誠実な春希だからこそ惚れたということもあり,そんな春希の態度は許せなかったのだろう。分かり過ぎる雪菜とかずさのことが忘れられない春希。そんな二人が付き合うということは,かずさのことを秘めた記憶とすることもできずに延々と雪菜を苦しめ続けるということであり,世の中に唯一人雪菜とだけは付き合えないのか?!という結論に達した春希は,嗚咽にも似た雄叫びをあげる。

 (14おわり)

Closing ~~ 雪菜 True End ~~

15 このルートに入る前に,「歌を忘れた偶像」を読むことをお薦めする。雪菜と繋がれたときの感動が何倍にもなるはずである。

 このルートは,春希にとって雪菜がかずさと匹敵し,「理屈的には」かずさよりも上の存在になるための過程を記したルートといえる。そのため,このルートの攻略が,Coda開放の必須条件となっている。どこかの感想にもあったが,“勇者雪菜”が “魔王かずさ”と対決するために,レベルアップする過程とも言い換えられる。そして,それによりCodaの三角関係を確実なものとし,プレーヤーの判断を悩まし,心抉られる体験をさせるために入念に練られた,作者からの時限爆弾入りのプレゼントとも思える。

 そう,このエンドはハッピーエンドのようで,そうではない。なぜなら,春希の心にはまだかずさという大きな存在が隠れていて,それが現れていないだけだからだ。このままかずさに会わなければハッピーエンドとなるのだろうが,次のCoda共通ルートではかずさに会った瞬間から心が揺れ始めており,もし最終的にかずさを選ぶとすれば,このエンドは雪菜にとってより辛い記憶となるからだ。このエンドの終わりでも,二人の関係は完全ではなく,まだ一つ弱点が残っている。かずさが近くにいないからのハッピーエンドということだ。雪菜の「不戦勝」と言い換えてもよい。

 このルートに進むための条件は,クリスマスイブでの一件の後,雪菜が体験した,現在も体験している痛みを,春希が真正面から味わい,そこから逃げ出さないことが必須となっている。その一件後,春希は相変わらず自分を追い詰め続けている。「相手につけた傷の深さに比べたら,俺のかすり傷なんて,笑ってしまうくらいの軽さで」「そんな俺が,こうして麻理さんに慰めてもらうなんて,おこがましいにも程があると思うんですよ」と,自分だけが楽になることに躊躇する。しかし,自分でも予想していなかった周りの人たちの干渉により,ひとり癒やされていく。「望まないまま,許されないまま…。それでも俺の生活は,徐々に戻っていく」と。春希はそのお節介な性格によりしばしば人の窮地を救っているが,救われた人はその恩を忘れておらず,逆に春希が窮地に陥ったときに,彼を救う大きな存在・力となっている。春希は周囲の人間から慰められるのを「おこがましい」と言っているが,それは春希の日頃の行いによる徳であり,それを享受しても罰は当たらないと思う。情けは人のためならずだ。

 (15おわり)

16 そしてその後に,例の選べない「コンサートに行く」という選択肢が現れる。冬馬曜子のニューイヤーコンサートに行けば,かずさの隣の席であり,物語は一気に全く違う方向に行ってしまう可能性というか必然性を備えた選択肢である。かずさ派の人にとって,なぜ選べないのか,地団駄を踏んでしまうほど悔しい気持ちなのは分かるが,物語の展開を考えれば,これを選ぶという選択肢はないように思える。今でも雪菜は苦しみ続けており,春希もようやく雪菜ともう一度向き合ってみようという気持ちが沸き起こってきたところであり,春希にはこの選択肢は選べないだろう。雪菜との関係を修復する以外に,余計なことは考えられなかっただろう。もしかずさにもう一度会ってしまえば,自分の感情を抑えられず,どうなるか分からないという怖さもあったのだと思える。

 コンサートの終了時,かずさと春希は,互いに気付くことなく,偶然近くをすれ違う。かずさは「この国に,あたしの居場所はないんだよ,もう」「なぁ…元気でやってるか?」「あけましておめでと。今年もよろしくな」「……もう,会うこともないけど,な」と呟くが,この意味はCoda共通ルートを読むと分かるようになる。個人的には,図らずも二人が偶然会ってしまったら,どうなったのだろうという興味はある。

 二年参りのときに,春希は依緖に頼んで雪菜に電話を掛ける。「どうしても,謝りたかったから」「どうして春希くんが謝るの…?」「だって俺,雪菜の言う通り,嘘ついてたから。かずさのこと,忘れてなかったから」「っ…」「そして,これからも…かずさのこと,ずっと忘れる訳がないって思うから」「う,ん…」「それから,それからさ…これが一番謝らなくちゃならないことだと思うんだけど」…「それなのに俺…やっぱり雪菜が大好きだから」と。『愛する心』のインストルメンタルが流れるこのシーンはほんとに感動的だ。ずっと近くにいた,ずっと悲しませてばかりいた大切な人に,やっと本心から向き合うことが出来たのだから。

 春希がネガティブな無限ループから抜け出せたことに対して,春希自身が麻理さんとの会話の中で語る言葉がある。「状況を自分で動かす気になれたって言うか…。『ここまで来て諦めるのも馬鹿みたいだよな』って思えるようになったというか…」と。かずさはこの三年間春希を思い続けたが,具体的な行動は何も起こしていない。雪菜は春希に触れられる距離にいながら,春希のことを思うあまり,また自分から近づくことの恐怖もあり,ずっと距離を取り続けてきた。後ろ向き過ぎた春希にとっては,雪菜のその距離感は実は最適なものだったのかも知れない。白熱灯のあかりが徐々に雪を溶かすように,雪菜が諦めなかったから,適度な距離を取り続けてきたから,今の前向きな春希があるとも思える。周りの人の温かさももちろん大きいけど,根源的には雪菜の三年間の思いと行動があればこそであり,春希がようやくそのことに正面から向き合えるようになったのだ。将に雪菜の粘り勝ちと言えると思う。

 (16おわり)

17 さらにストーリーを追っていく。柳原朋の卑劣すぎる手法により,雪菜は見ず知らずのチャラい男の車に強引に連れ込まれ,ひとり残されてしまう。「いやぁ…。駄目,降ろして…。こんなの嫌ぁぁ…」「いやぁぁぁっ! 助けて!春希くん,春希くんっ!」と春希の名前を呼ぶ雪菜。二年参りのとき以来,連絡を取っていない春希の名前を。結局,柳原朋に助けられるが,相変わらず挑発を続ける彼女に対して,雪菜は家族から引きこもりと言われた自分の「暗くて,深くて,キモい心の闇」をぶちまける。その心の闇は,春希への思いの強さと同じものだと読者は感じるだろう。この柳原朋,性格は悪いが,そのトリッキーな行動により,物語のゲームチェンジャー的な重要な役割をしばしば作者から与えられている。性格の悪い彼女にしか出来ないような,よい仕事ともいえる。

 春希は雪菜に聞かせるためだけに,ギターの練習を密かにしており,その事件のあった夜,練習中の春希に泥酔状態の雪菜から突然,「北原春希のばかぁっ!」と電話が掛かる。コールバックした春希に対して雪菜は「わたしに振られたくせに,そうやってぺこぺこ謝ったり,まだ好きだなんて諦めの悪いこと言ったり,ほんと,今の春希くんってイライラするよ!」などと酷い言いがかりをつけるが,雪菜の歴史,その思いを知っている春希は,昔のようなワガママをぶつけてくる雪菜,本物の雪菜に再び会えたことに涙する。春希はそこで,一週間一日10時間以上練習してきた,『ホワイトアルバムのギターインストルメンタル』を雪菜に披露する。「俺が失ったものを…。俺のせいで失ったものを,取り返したい」という思いをのせて…。

 翌朝,素に戻った雪菜が,謝るために春希のいる3号館までやってくる。春希は雪菜の行動があったからこそ,ああして久しぶりに話せることができたという肯定的な思いを伝えようとするが,「俺,全然気にしてな……くない」「色々と突き刺さること,あった。ちょっと,痛かった」と否定的に思い直している。雪菜の表情をみて,それ(肯定的な思い)が独りよがりのものだということに気づいたようだ。表面的な付き合いじゃない,もっと深い関係にまで踏み込んでいきたいという春希の決意の現れである。春希は,自分が変わっていくことを雪菜が心の底から望んでいるということに気づき,自分のことを雪菜には最低な人間だと思っていて欲しい,そうすれば「俺は,頑張れる。今の俺が最低だってことなら,最低じゃない俺に,これからなることができるから」と,雪菜のために変わっていくことを伝える。二人にとってはとても大きな出来事だ。春希の態度に応え,雪菜は立ち去り際,大声で「また…聴かせて!春希くんのギター…聴かせてっ!」と衆人注目の中,毎日電話をする約束をかわす。ここに辿り着くまでが余りにも長かったが,ようやく二人の歯車が噛み合い,前向きに一歩を踏み出し始める。

 二人は電話を重ねることで,徐々に3年間の距離を詰めていくが,会話の中で3年前の話題,二人にとっては三人の頃の話になってしまうことがある。その点は相変わらずのタブーのままであり,バレンタインコンサート出場決定後は多少改善されるが,その頃の話題を避ける姿勢はCCを通して二人ともほとんど変わることはなく,それがこのCCが完全決着の大団円にはならない要因と思える。トラウマから脱するためには,Codaは必須のストーリーといえるだろう。CCでは,春希のかずさに対する思いはどうなのだろう。本文中にはあまり描かれていないが,それは敢えて考えないようにすることでその思いに蓋をされている状態といえるのではないかと思う。CCから二年後のCoda共通ルートでは,かずさに会った瞬間から心を揺さぶられているからだ。かずさに対する思いは,意図的に重い蓋を被せることで,考えないようにしているだけで,確かに燃えていると考えられる。

 毎日電話を重ねる二人だったが,雪菜は前に進むことを怖がってもおり,そんな雪菜のために春希は「決めたんだ,俺」「雪菜が,俺とのことにはっきり結論を出すまで,ずっと待ち続けるって」「それまでは,雪菜が求めていることも,雪菜が逃げてることも,なんでも受け入れるって。雪菜の言うことを全部肯定するって…」と,自分の焦りを押しつけないことを,『待ち』を続けることを武也に打ち明けている。雪菜に気を遣わせないように,毎日電話するのは,自分がそうしたいから,ギターを聞かせるのは自分がそうしたいからとしながら。でも雪菜には「結局それって,わたしのためなんだよね…」と気づかれており,正直に「……まぁな」と答えているが…。しかし,前に進むことを怖がっているのは雪菜だけではなく,春希も同じだ。焦って,クリスマスイブのときのような失敗は繰り返したくないというのも大きいのだろう。

 (17おわり)

18 そうして,ある意味ぬるま湯の関係を続ける二人だったが,春希は雪菜との電話の中で,新たに練習していた「届かない声」を敢えて雪菜に聞かせようとする。「雪菜が目をそらしているものを,必死で見せないように努力するのは,俺のすべきことじゃないって思ったから…」と。しかし,雪菜はすぐに「やめて!」と強い拒絶を示す。その曲は,三人で作り上げた『届かない恋』は,否が応でも三人の頃の記憶を思い出させるものだ。その曲は雪菜にとっては,CC三年間で雪菜が必死に積み上げてきた心の鎧,大事な大事な歌を捨ててまでも守ろうとしてきた春希への思いを壊す力を持ったものであり,本能的に防御行動を取ってしまうのだろう。

 その曲は二人にとっては最も触れて欲しくない,デリケートなものであったが,超絶無神経な柳原朋により放送研究会に呼び出された雪菜は,バレンタインスペシャルコンサートに無理やりエントリーさせられることとなる。そのとき以来,雪菜はみんなの前から姿を消してしまう。依緖や武也も手伝い,方々を探す春希だったが,今日が祝日だと弟の孝弘から聞いた春希は,肝心な「三年前の思い出の体育館」へ駆けだしていく。そこで雪菜を見つけた春希だったが,雪菜は思ったよりも平常そうに見え,ステージ上に腰掛け,いない観客に向けて,三年前のように語り始める。しばらくして,「どうして…こうなっちゃうんだろうね。いつも,いつも…」と雪菜はつぶやくが,その言葉は自分の予想を超えて事態が展開していった3年前と重ね合わせているように思えた。そこで雪菜は,歌を嫌いになったのは,春希を好きで居続けるためだったということを告白する。「もし歌えば,必ず,この学園祭のステージが,みんなで練習した毎日が,最後の24時間が蘇る」。でも雪菜の記憶はそこで止まってはくれず,誕生パーティーや空港でのかずさとの別れなど,ICでのつらい思い出が鮮やかに蘇ってくるから,「そんなことばかり続けてたら,わたし,あなたを嫌いになってしまうかも…,憎んでしまうかもしれなかったから…。だから歌うのをやめた」と。自分のアイデンティティともいえる歌を捨ててまでも春希を選んだのだ。しかし,もし春希の望むように,雪菜が春希のことを憎み,罵っていたらどうなっていたのだろうか。春希はもっと早くに立ち直っていただろうか。でもそれは雪菜にとってはあり得ないことのように思える。三年前の根本原因を作ったのは自分だと思っているし,春希のことも分かりすぎるし,そういうことをぶつけられるような関係でもなかったからだ。

 そんな雪菜に対し,春希は彼女を自分の部屋へと誘う。春希の部屋でシャワーを浴びる雪菜は,自分は大丈夫だと何度も言い聞かせる。春希も同じように自分に言い聞かせるが,このまま雪菜を受け入れても,自分に嘘をついて,二人とも傷ついたクリスマスイブの二の舞であり,例え二人が肉体的に繋がったとしても,重い気持ちを抱えたまま心の底から繋がれる訳がないと気づき,敢えて『届かない恋』のギター練習をすることで,同じ轍を踏むことを回避しようとする。見事な判断だ。愛する人には,特に敏感な雪菜だからこそ,正直にならなければいけないと春希は悟ったのだ。そんな春希に対して,困惑の思いを隠せない雪菜だったが,春希は聞く耳を持たず,一人ひたすらギターの練習を続ける。雪菜は「今度は…絶対に,拒んだりしないよ?今日だけは,わたしのこと信じて…。お願い,春希くん。わたし,もう,大丈夫だから。春希くんを傷つけたりしないから。うん,大丈夫…。わたしは大丈夫だから」と踏み込んでこようとするが,春希に真意を悟られてしまう。クリスマスイブのときと全く逆の立場となっている。春希自身がこう思っていることが本文中に書かれている。「今の雪菜は,俺に逃げようとしてるって。あの時,雪菜が俺の逃避に気づいた理由が,今になってはっきりと理解できる。相手のことを想えば想うほど,見えてきてしまうものなんだって」と。私のことは嫌いなのかと聞く雪菜だったが,春希が「好きだよ…。世界で二番目に,大好きだ」と答えたことで,みるみるその顔が青ざめていく。そして雪菜はかずさの名前を呟くが,その途端,春希は「だって…。俺が世界で一番好きな人は,俺の前で,楽しそうに歌う雪菜だから」と,雪菜の心の底まで,骨の髄まで落とそうと一世一代の勝負をかける。それでもまだ落ちない雪菜だったが,春希は練習を止めることはなく,「なぁ,雪菜…。今の自分,本当に好きか?」「俺のせいで歌わなくなって…,そのせいで笑わなくなった自分のこと,好きでいられているか?」と,彼女のことを本当に思っての行動であることを示すが,それでも雪菜はなかなか首を縦に振らない。しかし,春希も折れないため,次第にやぶれかぶれな態度はなりを潜め,いろいろな人へ気遣いをする,普段のお人好しの雪菜へと心が変化していく。自分の気持ちと,春希のことやコンサート関係者のことを思う気持ちとが,葛藤をはじめる。そんな雪菜に対し,春希はあくまでも待つという基本姿勢を貫き,雪菜が悩み抜いて決めたことなら従うという約束をする。空が白みはじめたというのに,雪菜はずっとバスタオル一枚を巻いたままで話をしていたことには驚かせられるが…。

 結局,二人はコンサートに出場することを決める。24時間の練習で,雪菜は自然に鼻歌を口ずさむまでになっている。出場直前の控え室で雪菜は春希にある決意を告げる。歌を歌うと辛い思い出を思い出して春希のことを嫌いになってしまうかも知れない,憎んでしまうかも知れない,「だから,だからね…。コンサートが終わったら…,わたしを,無理やり奪ってください」「わたしがどれだけ泣いても,抵抗しても…,あなたに恨みの言葉をぶつけても…。もう…,待たないって。そんな昔の記憶に囚われた…,洗脳されてしまったわたしなんかの言葉に,絶対に,耳を貸さないって」と。

 (18おわり)

19 コンサートの後,必死で春希のマンションへ駆ける二人。三年間を取り戻すように何度も何度も重ねる唇。二人はやっと結ばれる。雪菜は,絶対にわたしのことを離さないで,いなくならないでと呻き,春希は「離さない,いなくならない…。雪菜,俺,愛してる,愛してるから…」と答えるが,春希の言葉をどこまで信じていいのかと,正直疑念が沸く。三年前にも同じことを言っていたのに,ああいう結末になったからだ。春希としては,嘘を言っている気持ちはないと思われる。愛しているのは本当だろうし,理性的に考えてもそうあるべきだと思っているだろう。しかし前述のように,Codaではかずさに会った瞬間から心が揺れている。かずさへの愛が熱情に突き動かせるような激しい愛だとしたら,雪菜への愛はより落ち着いた,理性が入る隙間のある愛のように思われる。うがった見方かも知れないが,今はかずさから遠く離れているから,そう言えるように思えてならない。ベッドトークのシーンで,三年前のことを思い出し,『これからも,ずっと一緒にいてね?』と雪菜に言われても,「即座に『ずっと一緒だ』って答える準備はできている」と春希の思いが書かれている部分がある。これは,雪菜への思いを春希が伝えるときの常套手段であり,定型句化して,自分の感情を差し挟まないようにしているようにも思われる。心からの思いを素直に述べるのであれば,別にこんな準備は必要ない。雪菜はその問いはしないが,春希がそう答えることを分かりすぎているからなのかも知れない。これからかずさが現れなければ,二人の恋は結婚に繋がり,春希の言葉は真実ということになるのだろうが,そこに辿り着くまでにはまだまだ波乱が待ち受けている…。かずさに出会うことになれば,春希が真の意味でかずさへの思いを断ち切り,不戦勝で勝っただけの雪菜がガチバトルでかずさを倒さなければ,そこには辿り着けないのだから…。

 春希のマンションで丸五日間,甘い生活を重ねる二人だったが,これ以上こんな幸せなところに居たら人として駄目になるという雪菜の提案により,明日雪菜が帰ることを渋々受け入れる春希だが,明後日また会おうという提案をする。明後日会ったら,次はその三日後,次はその四日後に会おうと。ここら辺の春希は男としては情けない。しかし,頭のよい雪菜は,その上限はどこなのかと不安になることで,逆に自分が弱い立場になり,春希を奮い立たせようとする。「じゃあこうしよう…,間隔が一週間になったら,そこが上限」と,斯くして『一週間ルール』が二人の間で取り決められることとなる。

 そして2月28日,二週間遅れの雪菜の誕生パーティーで,春希は三年前に買った指輪を雪菜に,照れながら,ちょっと不安を抱えながらもプレゼントする。二人は三年前の雪菜の誕生日に,本来そうあるべきだった誕生パーティーにようやく戻ることが出来たのだ。紆余曲折を経ながら,三年前とは比べものにならないくらいの絆を得て。外には雪が舞い始め,辺りを優しく包んでいく…。三年前の,一人でクリスマスパーティーを過ごした雪菜の挿絵が入るが,雪菜の肩を抱く現在の春希,そして仲間たちの絵が重なっていく…。

 個人的にはCodaがなくて,このエンディングが一番綺麗な終わり方のような気がする。最も現実的と言えるだろう。しかし,場面は突然,二年後のクリスマスイブ,フランス・ストラスブールに移り,そこで偶然にも春希はかずさと出会ってしまう。雪菜にプロポーズするために買った指輪を持ったままで…。(Coda共通ルートへ続く)

 (19おわり)

Closing ~Normal End~

20  4人でスキーに行く(正確にはその車内の)話。ほんとそれだけ。あっさりしてて逆に非常によい。

 (20おわり)

Closing ~千晶 Normal End~

21 雪菜に拒絶された後,和泉に癒されるシナリオ。コンセプトは,「甘美で,あまりに不公平な罪」。

 春希の説教を,軽く受け流す千晶のふわふわした性格は,意外にも春希に合っているのではないかと思えた。雪菜に対するあまりにも酷すぎる裏切りだが,最終的に全てを友人と雪菜に正直に話したのはよかった。それでも前向きに受け止めてくれる雪菜はすごく懐が深いが,同時に切ない。

 (21おわり)

Closing ~千晶 True End~

22 ………。予想以上の展開をするシナリオで,言葉がない…。ノーマルエンドとはまるで逆の千晶に驚かされる。CC共通ルートの「ほんと,春希ってさ…。可愛い女の子にだけはとことん冷たいよね」というセリフはこのエンドを知ってから読むと,怖さを感じる…。「春希のことならなんでも知っているよ」という真意が分かるシナリオ。

 最終的には雪菜を振って千晶と結ばれる。雪菜との別れのシーンは涙なくしては読まれない。特に,雪菜が春希のことを一生恨むよといい,だから春希からもらったブレスレットを一生大事にするといって,電車に乗り込む最後の別れの場面は…。

 春希と結ばれても千晶は相変わらず掴みどころなく,なかなか本心を表さないが,「あたしがあんたを幸せにしてあげる。いつか必ず,『お前と一緒にいてよかった』って,心から言わせてみせるからね」というセリフなど,心の奥では春希に感謝し,心底惚れていることを思わせる少しの言動に,辛うじて救われる思いがした。

 (22おわり)

Closing ~小春 End~

23 Coming Soon

Closing ~麻理 End~

24 Coming Soon

Coda ~共通ルート~

25 Coming Soon


   みんなの感想!

Yuuka

 内容はかなりのボリュームで、しかも作りこまれててとても驚きました。そしてかなり胸を抉られるような辛いシーンもありました。だからこそ感動するシーンも多かったのですが・・・。
 とりあえず、それぞれの人物に対する感想から述べていきます。

Produced by Yuuka

  ↑ Yuukaさんオリジナル!

      

Charactors


ずは物語の主人公である春希から。
 最初ホワイトアルバム2のアニメを見て、それからIC、CCを終えて、正直な感想は最低な男だと。何も手放す勇気がなくて、それを雪菜やかずさを傷つけるからという理由に託けて、優柔不断な態度をとり続けている。そして結果的にどちらも傷つけて、自分まで傷ついてしまっている。ただ、それも恐ろしいほどの真面目さがこうさせてしまったんだろうと思いました。
 最初に捲いた種はふらふらした自分自身の態度だけど、そこから自分が壊れるまで苦しんだのは責任感の強さとか、雪菜やかずさに対して真面目に本気で向き合ってたからこその罪悪感。
 第三者、特に雪菜の友達である朋なんかから見れば、本当に最低な男だろうけども、雪菜やかずさから見れば最高に優しい男だったんだろうなと思います。
 あとは春希のみせる二面性。完璧で、理性的にみせようとする優等生な春希と、発作的に自分の感情が爆発してしまう春希。
 雪菜には理性的で落ち着いて、まさに小動物を守るように接していますが、かずさに大しては悪態をつくような素のありのままの春希。
 かずさには始終「お前」呼ばわりですし、自分をさらけ出せる相手だったんだろうなと感じました。(浮気エンド後のエクストラエピソードでは、雪菜に対してもお前と呼ぶようになりましたが)

に雪菜。
 とにかくすごい女性だと感じました。忍耐強くて、優しくて、包容力があって、小悪魔で、純粋で一途で、でも計算高くて、美少女なのに高飛車を感じない庶民的で家庭的。その家庭的だというのも、最初料理ができなかったが、春希のために努力したというのが伺えてまた好感。大学に行くのも、春希と同じところに行きたいからと頑張って健気。
 正直、なぜこんな完璧な女の子が春希なんかにあんなにご執心なんだろうかと謎でしたが、雪菜からしてみると春希ほどの男はそういないんだろうなと思います。頭が良くて、しっかりしてて、頼りになって・・・なんかのスペックはもちろんですが、夜中にどんなに長電話しても怒らない、自分がどんな不平を言っても怒らない。何かあれば全力で自分を助けてくれて、夜中だろうといなくなれば探しまわってくれる。こんな男性、まずいないでしょう。
 あと、トラウマから救ってくれた男性というのが大きいんでしょうね。学生時代、友達から仲間はずれにされたという過去から、春希とかずさは救い出してくれた。そして、春希は雪菜を一人にしないと約束してくれた(これが後に首を絞めるんですが)。それが、付属時代の雪菜にとってどんなに嬉しかったか。だから雪菜は、盲目的に好きになってしまったんでしょう。その盲目さゆえに、都合のいい女扱いされたとも感じられます・・・。
 かずさのことも、本当に大事にしてるのが伝わります。だからこそ、憎めないキャラ。

してかずさ。
 美人で、自分の興味のあること以外目も向けない、ぶっきらぼうで近寄りがたい。最高にかっこいい。でも本当は、優しくて、かなり乙女で、一途で素直で、純粋で・・・。
 付属時代から春希のために一生懸命尽くす姿に、どうしてもかずさを応援してしまいます。
 春希のために、文化祭を成功させようと頑張り、春希と雪菜が付き合った後、気丈に振る舞う姿。
 卒業して5年間想い続ける姿。ストラスブールで春希を見つけて凍傷になってまで走って追いかけてくる姿。
 そして自分を犠牲にしてまで、春希を守ろうとするのは、見てて切なくてつらかったです。
 特に顕著だったのが、浮気エンドでのかずさ。春希を愛しているからこそ身を引く、本当にかっこいい決断です。
 かずさからすると、まさに好きになるのは春希しかいないと思えるような状況だったなと思います。実はものすごい寂しがりやで、寂しい思いをしてた付属時代。でもまわりに絶望していたときだったので、自分から世界を遮断していました。どんなに冷たく接しても、自分の世界に入ってきた春希だけが興味が持てて、信頼できる人物だったんだろうなと。だからこそ、春希と幸せになってもらいたかったですが・・・。
 ただかずさの性格上、やはり難しかったなと思います。たとえ、付属の文化祭終了後に雪菜が春希に告白をしなかったとして、春希とかずさが付き合ってたかというとそうではないでしょう。二人とも恐らく自分とは釣り合わないと思い込んで、そのまま卒業。そして春希は優等生な大学生活や社会人生活を送る。かずさは海外に行くこともなく、引きこもりのような生活を送るのではないかと。「雪菜の告白」というアクションがあったからこそ、二人の関係が進んだと考えられます。
 かずさと春希の幸せな未来、可能性があるとすれば・・・かずさに告白されたときに、春希が潔く雪菜を振る事だけだったんじゃないでしょうか。

の他
 依緒。友達になるとすごいいい子なんでしょうが、自分の気持ちを衝動的にぶつけてくるのでちょっとかずさtrueエンドではつらかったです。
 武也。単なるサブキャラじゃなかったです。真のイケメンだと思いました。実は一番冷静で、友達想い。
 朋。愛情表現が独特。わざとヒールを演じる憎めない子。いつまでも雪菜の味方でいてあげてください。

      

Introductory


Codaまで終えて、ICを振り返るとしみじみしたり、ほっこりしたり、苦しかったり、まさに始まりだったなあと思います。このときの無邪気な雪菜が懐かしい。そして届かない恋を書いた春希の淡い恋心が伝わってきます。
 学園祭が終わった後、かずさと春希が誰もいない音楽室で二人で話すシーン、いいですね。ただ、そこから物語が大きく動いていくわけですが・・・。この後すぐに雪菜が春希に告白し、キスをしちゃうわけですが、このときの雪菜の気持ちとしては「春希への想い」<「トラウマの過去」だったわけであり、その行動が後々まで3人を苦しめることを考えると残酷だなと思います。でもこれはただ単に男女の恋愛のことなので、大なり小なり春希に想いを寄せる雪菜が春希に告白したところで何の問題もなく、むしろ当然のこと。むしろかずさより先に行動を起こし、お付き合いまで至ったのだから先手を打った勝者です。
 春希ももちろん雪菜ほどの女性に告白されて断る理由もあるはずもなく・・・と、いいたいところですが、女性目線からすると、かずさの気持ちに気づいてあげれない春希の女心の分からなさが最大の痛手。それなのに、その場で告白を受け入れるという安易な決断も致命的。
 周りの友人も3人の関係性を見抜いていたにもかかわらず、春希と雪菜の恋の応援ばかり。それどころか、かずさとは住む世界が違うと諭される・・・。これは雪菜とかずさの人徳の差にもよるものかもしれませんが・・・。
 まだ、この取り返しのつく時期になんとかできていれば、とゲーム中にいつも考えてしまいます。
 そして二人と一人でいることを強いられる関係になるわけですが、かずさにとっては本当に拷問。海外に行きたくなりますよね・・・。

菜の誕生日パーティーの日、春希が感情的になって、自分の気持ちをぶつけてしまった日。このシーン、何度みても泣けます。この日の時点で、もう完璧に春希の気持ちはかずさに注がれています。
 卒業式の日、空港での別れ。人目があろうが、雪菜が傍にいようが自分を制御しきれていないです。
 かずさの完全勝利の両思い。それなのに海外へ行ってしまうのは、雪菜への罪悪感なのか、春希の幸せを思ってなのか、はたまた自分が捨てられるのを恐れてか。やっぱりかずさにとって大切な二人である春希と雪菜の幸せを、優先したのではないかなぁと考えます。codaで出会うまでは・・・。春希と雪菜がclosing chapterであんな風なつかず離れずの距離間になったということも知らないわけですし。

      

Closing


の章から先は人によってすごく感想が別れるのではないかなぁと感じます。
 かずさと離れて、罪悪感から雪菜と向き合えなくなった春希。雪菜自身、離れることを心の奥から望んでいなかったっていうこともありますが、二人にとってキツイ距離感だっただろうなと思います。
 雪菜にとっては歌を歌うことをよりも春希と一緒にいることを選んだのに、春希は雪菜から逃げてばかり。普通なら、途中で春希を見捨ててもいいレベルの話ですが、それでも雪菜は春希を選んでました。むしろ世界を閉ざして春希しかみてなかった。これはもう愛情とか、一途とかを飛び越えて執念としか言えないのではないかと。春希の裏切りがあったからこそ、春希を呪うことでどんどん盲目的に陥っているように思います。

CCを終えて感じたのは、春希と雪菜の間にあるのは「恋愛」というよりも、「情」という感覚が強いのではないでしょうか?
 春希とかずさは「恋愛」をしています、というのがすごく伝わってきますが、春希と雪菜はCCを経た執念の先の「情」。もちろん春希の雪菜への愛は感じ取れますが、恋愛対象として強い想いは、やはりかずさに向けられているんだろうなと思います。
 ただ、そんな春希をあきらめなかったのは、雪菜の芯の強さ。
 CCの一番の見所は、心の溝を徐々に修復していって、二人の絆がより強くなったことのアピール。プレイヤーに「雪菜、良かったね!!」と思わすためのシナリオなんだと思いました。
 もしもこのまま雪菜との距離が縮まらないまま、大学を卒業し、ストラスブールでかずさに会ってしまっていたら・・・未来は全然違っていたのになぁと、かずさ派の私なら思わずにはいられませんが・・・。

とCCで欠かせないのがサブヒロイン達の存在です。春希が自分らしくいられたのも彼女達がいたからこそなのではないでしょうか?
 私は麻理さんルートしかクリアしていませんが、正直春希はサブヒロインと結ばれたほうが幸せになれたのでは?とクリア後に思いました。
 麻理さんはかずさに似て、気が強くて、かっこよくて、でも優しくて乙女で、家事は二の次。春希もかずさと重ねてみてるところがありました。そして麻理さんが自分から離れていこうとするシーンでは、かずさのときのように理性を失ってしまうときもありました。
 最終的には雪菜へ別れを告げて、麻理さんを追いかけてアメリカへ。「どうしてこれをかずさの時にしなかった!?」と最初は思いました。でも、これはなんのしがらみもない、3人の思い出も何もない相手だからこそ取れた行動。何よりかずさは自分から別れを告げて去っていきましたが、麻理さんは歩み寄ろうとしてくれていました。周りの人達の後押しもありました。そして自然な流れでした。
 クリスマスに恋人に拒絶され、距離をおかれた春希を慰めてくれた職場の上司。その人を好きになったので、恋人に別れを告げて、新しい恋をした。よくあることです。
 春希にとっても、雪菜にとっても全然別の人と結ばれたほうが幸せなのかなーと思わされる話でした。
 ただ歌を忘れた偶像を読むと、雪菜が不憫でなりませんが・・・。
 それにしても春希、麻理さんルートでも相変わらず大事なときに、大事な選択をできない人間だと・・・。

(Codaの感想へ続く)

Yuuka

      

Coda ~雪菜 True End~


ごく綺麗にまとまって、みんな幸せなエンディングです。雪菜、春希はもちろん、依緒、武也、雪菜の家族、曜子さんも、春希の職場の人たちも平和的に落ち着いたなと思います。かずさも、春希への思いは報われなかったけど日本で前向きな姿勢を見せています。
 CCで雪菜との関係を修復し、まさに結婚の決意までしている春希とストラスブールで出会ってしまったかずさ。これまで積み上げてきた雪菜との関係を揺るがすほど心乱されている春希ですが、必死で思いとどめています。5年間の空白の時間があるにもかかわらず、この必死で留まっているあたり、春希の中でのかずさの存在はやっぱり大きいんですね。
 でもこのルートの春希はとても雪菜に対して、誠実です。というか、私はかずさルートにいきたくて選択肢を選んだつもりなんですが、いつの間にか雪菜ルートにいってしまっていました。つまり、雪菜とのエンディングを迎えるためには自分の気持ちやかずさとのことをきちんと雪菜に話すことが必須なんだと思いました。
 雪菜に素直に話したからこそ、かずさのコンサートの日に逃げ出して、雪菜に会いに行った春希を雪菜はコンサートへ送り返します。このルートの雪菜はとてもかっこよくて、春希とかずさに向き合おうとしているのが感じられます。

も結局のところ、このルートでは春希はかずさへの思いに自分で決着をつけられなかったように思います。かずさがコンサートが終わって、母親の病気のことを知って、すべてを拒絶したのを春希は救えなかった。それを救ってほしいとお願いしたのは雪菜。そして実際に、かずさに寄り添って心を開いていきました。春希、情けないです・・・。
 ほかのエンディングとは違って、二人がちゃんと向き合って心の内を話したことで、かずさの中にあった雪菜へのわだかまりというものが少しずつ溶けていったんでしょうか。5年前、春希に思いを告げてしまって初めてですよね。雪菜と真正面から話すのは。そして雪菜の強さと優しさに触れて、敵わないと痛感したことでかずさの気持ちの整理がついたのかなぁと。
 雪菜のおかげで、再び3人一緒にいることができるようになりました。最後のほうはICを思い出して、見てて嬉しかったです。
 エンディングのCGでは二人の結婚式。それも見ると、春希と母親との関係も改善されたんだろうなと思います。表面上だけでなく、雪菜は春希の心の底のトラウマも救ってあげたんでしょうね。
 本当に雪菜はICのときから比べて、CCとcodaを経て素敵な子になったなぁと思います。春希の、雪菜への誠実さがそんな雪菜を作り上げていったんだと信じています。

だ、このルート、個人的にはあまり納得はできなくて、先ほども書いたのですが春希自身がかずさへの思いに決着をつけたのではなくて、なりゆきでそうなってしまった、みたいに取れなくもないように思います。
 かずさtrueのように自分でかずさを選んだり、浮気ルートのようにかずさへの思いを乗り越えて雪菜との距離を縮めたり・・・そういうのが春希には必要じゃないかなと思いました。

      

Coda ~かずさ True End~


このルートの春希が一番男らしくて、かっこよかったです。その分、こちらの心の抉られ方が尋常ではなかったですが・・・。
 雪菜と違って、まわりの人たちへの後味の悪さがすごいです。「なぜ雪菜にプロポーズした!」と怒鳴ってやりたかったです。でもそれくらい、春希に余裕がなくなっていたんですよね。雪菜を選ばなくちゃいけないという理性と、かずさへの愛情で悩んで、もう雪菜しか選べない状況を作るために雪菜にプロポーズした。だからこそ、後々つらくなってしまったんですけど・・・。
 優等生だった春希が、かずさのためにすべてを捨てる。職場も、友達も、雪菜も、日本も。あの春希がここまでするということは、相当の覚悟を感じます。その罰を受け入れる覚悟も。かずさも、今まで罪悪感が付きまとって煮え切らなかったですが、春希とともに堕ちていく覚悟を決めました。雪菜のことを裏切ってでも。

菜との別れがきつかったです。あの思い出の場所で、雪の降る中のお別れ・・・。そして雪菜の家族。あのシーンが一番つらかったです。
 ただ、そのあとの雪菜の家族に激怒する場面。あの気持ちは分からなくもないです。まわりが騒げば騒ぐほど、春希は引き返せなくなる。自分に戻ってくれなくなる。・・・家族からすれば、戻ってきてほしくないでしょうけど・・・。
 依緒と武也も険悪になってしまいましたね。依緒の気持ちはもっともだけど、そんなに言わなくても・・・とショックを受けました。武也はすごくいい友達でしたね。最後まで春希のことを思ってくれて、春希が幸せに納まるようにしてくれようとした。見捨てないでいてくれました。涙がでるほど嬉しかったです。本当の親友だと気づいたときには、お別れでしたけど・・・。  曜子さんともお別れ。かずさのためにも、曜子さんのためにも一緒にいてほしかったですけど、日本にいることはできないですもんね。本当にふたりだけの世界。

のルートの春希の評価すべきところは、雪菜に対しても誠意をみせているところ。ギターを聴きたいというかずさに、春希は絶対に弾かなかった。雪菜のために。浮気ルートの春希と比べると、男らしいです。
 雪菜trueほど、きっと春希は幸せにはなれないと思いますが、それでも一番愛する人を守ると決めた春希・・・幸せになってもらいたいです。
 雪菜も前向きに生きてもらえれば・・・と、思いますが、それは最後を見る限り、まだまだできそうにないですかね・・・。

      

Coda ~浮気エンド~,Extra episode


気エンドは一番ホワイトアルバム2らしいストーリーだなと思います。春希が全然5年前と比較して成長が見られないわけですが・・・。同じことを繰り返して、むしろ春希とかずさの思いが通じ合っているわけですから前より悪化しています。かずさに明らかに心動かされながらも、雪菜との関係を断ち切れない春希なわけですが・・・。
 かずさも春希を庇うように「かずさと一緒にいるのは同情だ。だから春希は悪くない」というような言葉を言っていますが、単に春希との繋がりを失いたくなかっただけ。同じく雪菜も春希の変化に気づいていますが、見てみぬ振りしてごまかしています。3人が3人とも、臆病で自己中心的だなと感じました。
 かずさは、春希と一緒に過ごせてすごく幸せそうでした。そんな中春希がついに罪悪感に耐え切れなくなって壊れていってしまうわけですが、かずさの前ではいつもの自分でいられる。だからかずさと二人だけの世界に逃げていってしまいます。
 でもその間、かずさや雪菜のtrue endでは曜子さんの病気のことを知ったり、かずさの次の追加公演についての話が進んだりと、環境が変わっていっていますが、このルートでは完璧に外をシャットアウトしています。
 春希もかずさもお互いのことが、そんなに好きだったのかと改めて感じさせられるルートだったなぁと思いました。常識的な春希が駅前で抱き合ったり、電車の中で「あーん」をしてあげるほど、盲目になっちゃうんですね。
 二人だけで旅行にいったとき、旅館で言った結婚の誓い。かずさすごいかわいかったです。あの一晩だけでも「春希の妻」でいられたことが、かずさにとって何よりも大切な思い出であり、気持ちを整理して区切りをつけるきっかけになったのではないかと思います。そう思ってくれただけで幸せってことで。でなければ、もっと早い段階で春希のためにも別れを切り出していたはずです。ただあの別れのシーンは泣けます・・・。
 そしてかずさの追加公演での努力。春希に迷惑かけないために、雪菜と何事もなく元通り過ごせるように。
 春希はそんなかずさの思いにもかかわらず、雪菜に本当のことを告げて完全に崩壊してしまいます。

こから先はエクストラエピソードで、雪菜がかなりの努力で春希を支えていくわけなんですが、すごい女性です。本当に逞しい。
 かずさも曜子さんの病気のことを知り、前向きにピアノに取り組んでいくわけで、しっかりしたなぁと思います。
 そんな二人が心が折れそうなときに、電話でやり取りをしていきます。雪菜からすると、かずさは春希を崩壊させるだけさせといて、本人は海外へさっさと行ってしまうという状態に。本来ならかずさに激怒するような事態ですが、雪菜は泣いて謝って、かずさが激怒。でもかずさの対応は、2年前の二人がどんな苦労を経て結ばれたのか、そして今回も春希は雪菜と何事もなく続いていくと信じてやったわけなので、しょうがないかなと思います。不倶戴天の敵。でも春希を通して、二人が互いに気持ちをぶつけることは避けて通れない道なのかなと思います。それがあったからこそ、かずさも雪菜も立ち直っていきましたしね。
 かずさのフランスでの公演、最後の「ざまぁみろ」は良かったです。かずさの前向きな意思がよく伝わっていくる言動でした。その後の曜子さんが娘の実力に嫉妬することは笑いました。曜子さん、素敵です。
 そして春希と雪菜ですが、半年以上の月日をもって大分落ち着いてきましたね。今回の件を通して、春希と雪菜の距離も本当の意味で縮まったように思います。かずさに対して吹っ切れたというか、乗り越えられたんじゃないのかなぁと思います。雪菜を「お前」呼びしたのも、そういう表れなのではないでしょうか。

のルートはそれぞれ3人の気持ちの中で、きちんと想いが決着したように思います。なのでエンディングの中では一番しっくりきます。
 きっと春希と雪菜はこの後結婚すると思いますが今度こそうまくいくはずです。
 3人ともに幸せになってもらいたいです。
 (終わり)

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